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MEN 同じ顔の男たちのmichikoのレビュー・感想・評価

MEN 同じ顔の男たち(2022年製作の映画)
3.0
“MEN”
これ程秀逸なタイトルは中々無いが、それに『同じ顔の男たち』というサブタイトルを付けての日本公開。監督の意図なのか配給会社の意図なのかは分からないが、主人公が陥る異常事態の内容が非常に分かりやすくなった反面、男たちの顔が同じである事の気付きを視聴者側に委ねている本作にとって、何とも残念なネタバレである。

本作の旧約聖書メタファーは非常に分かりやすく描かれている。禁断の果実を食したアダムとイブは原罪に苛まれる事となり、それは西洋文化の中で根付くことになる。本作で描かれる問題は男らしさ女らしさというLGBTQが叫ばれる現代的にも感じるが、そう感じるのは今を生きる私の無知さ故なだけで、歴史上様々な場で叫ばれ世界を動かしてきた事象なのかも知れない。

男は出産する女性とその愛を求める。女性は働く男とその種子を求める。それは生物学的に定められた部分であるが、そこに複雑さを生むのが人間らしさでもある。そしてそこに自ら定めを植え付けるのもまた人間である。それは馴染みの薄い旧約聖書だけでなく我々日本人の古くからの男性女性感でも根付いている。この普遍的な謎かけは時と場所を選ばずに、永遠に我々を苛み続けるのかも知れない。
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