かずぽん

リボルバー・リリーのかずぽんのレビュー・感想・評価

リボルバー・リリー(2023年製作の映画)
3.0
【かつて“リボルバー・リリー”と呼ばれた元スパイ】

監督:行定勲(2023年・日本・139分)
原作:長浦京『リボルバー・リリー』…第19回大藪春彦賞(20107年)

※レビューのラスト部分が、ひょっとしたらネタバレかも。

綾瀬はるかが敏腕スパイ役で主演。以前『奥様は、取り扱い注意』という作品でもスパイ役を演じていたけれど、本作で演じるスパイはかなりシリアスで、冷静な物言いやニコリともしない表情は、美しいけれど“綾瀬はるか”らしくない。
冒頭、黒い画面に白い文字で小曽根百合の経歴や背景の説明がある。この段階では情報が頭の中を素通りして行くだけだった。画面に緊張感が走ったのは、一家惨殺シーンになってからだ。一人だけ逃げ延びた少年・細見慎太(羽村仁成)が、父に言われた通り小曽根百合を頼って玉ノ井まで行くという展開だった。
その小曽根百合(綾瀬はるか)は、東京玉ノ井で―Rumble(ランブル)―(騒動・乱闘の意)という銘酒屋をやっていた。
新聞記事では、細見一家惨殺の犯人は筒井国松(石橋蓮司)で、事件後自殺したと報道された。しかし、国松を知っている百合には納得が出来ず、秩父まで確認に行く。案の定、この事件の裏には陸軍が関係していることが判る。
慎太の父・欣也が持つ国家予算の10%という巨額な資金を手に入れるために陸軍が血眼になっていたのだ。

あくまでも私の場合だけれど、内容も画面も暗くて「あ、私が眠たくなるやつだ」と思った。ストーリーを追うのが精一杯で二時間越えの尺は辛い。こういう時には、私は日本語音声ガイド付きでもう一度観ることにしている。(音声ガイドは親切で、気が付かないでいた些末な事まで教えてくれる。劇中、挿入される百合のフラッシュバックのシーンの意味が、この音声ガイドで理解出来た。)

百合の相棒・協力者に岩見弁護士(長谷川博己)、奈加(シシド・カフカ)、琴子(古川琴音)。
顔芸を使わない冷静な長谷川博己もいい(笑)。カフカ姉さんはライフルを構える姿が凛々しくてカッコいい。古川琴音は声が少女のように可愛らしい。
帝国陸軍上官役で板尾 創路。津山役でジェシー。ジェシーは長身で画面に映えるのだけれど、私的にはドスを利かせた彼の声がダメだった。(SixTONESの時はカッコいいのに。残念。ファンの方、ゴメンネ。)
不気味だったのは、南役を演じた清水尋也。(この人、いつ見てもヒョロッと細くて冷たいイメージ。)
海軍・山本五十六に扮するのは、阿部サダヲ。存在感があるだけに、海軍の軍服姿で台詞を言うだけの役では勿体ない感じ。
嬉しかったのは、豊川悦司が細見欣也役で登場したことだった。ビールのCMで見るようなチリチリの髪じゃなくて、ビシッと撫でつけられた髪型でのスーツ姿は、若い頃の魅力を失っていなかった。しばし見惚れてしまった。

綾瀬はるかの見どころは、アクションと衣装の二つ。『レジェンド&バタフライ』で共演した木村拓哉からも乗馬やアクションを褒められる腕前なのに、その実力が活かされていないようで残念だった。ひょっとしたら、あの衣装のせいで動きに制約があるのかも知れないけれど。
海軍省前での戦いで血に染まる真っ白なドレスは、洋服の仕立て屋・滝田(野村萬斎)が百合に手渡す時に「お気をつけて…」と言っていたドレスだ。かつて百合の愛した男が、常々「戦う時にも身だしなみには気をつけなさい」と言っていたそうだし、いつも綺麗な洋服を着せてくれたと百合が回想していた。滝田は、これが百合の戦闘服(勝負服)になるのが分っていたのだと思う。
海軍省近くの池で、刺客・南との死闘のシーンでは、百合の左胸深くにナイフを突き刺され、どう見ても死んでしまうだろうという状況だった。「私は生きることにした」と彼女が言っても、直ぐに息絶えてしまうのではないかとハラハラしたが、百合は不死身だった。ふと、白装束で白髪の老婆のことが思い浮かぶ。あの老婆は死神ではなかったようだ。
切なかったのは、慎太の父がかつて百合が愛した男・水野(名前を変えていた)だったこと。百合との間に出来た子は殺されてしまったのに、違う女性との間の子どもを託されるとは…
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