CHEBUNBUN

Ascension(原題)のCHEBUNBUNのレビュー・感想・評価

Ascension(原題)(2021年製作の映画)
4.0
【富を求め物量の海へ漂流する】
CPH:DOXで『Ascension』を観た。本作は第94回アカデミー賞長編ドキュメンタリー映画賞にノミネートされている。中国社会の産業観察ドキュメンタリーということで観たのだが、強烈な作品であった。

「努力すれば夢は叶う。」街にはスローガンが掲げられている。歩きスマホを巨大ディスプレイに映し出す、通りでは、日雇い労働者がその日の仕事を探す。工場では、淡々とキャップを作ったり、布に穴を開けたり、ペットボトルに貼られたラベルの中で欠陥品を抽出する作業が行われている。生産性を上げるために、スマホで音楽や動画を聴いたり、観たりしながら労働する。ホテルでは、スタッフがタオルで鳥を作る。研修と思しき会場では、英語でのもてなし方をスーツに着られている者たちが学ぶ。

娯楽施設はどうだろうか?プールが映し出される。サマーランドもびっくりな、人人人がひしめきあい、ライブを聴いたり、浮き輪がぶつかり合ったりしている。社会の歯車として、人間が活動し、急速に発展していく中国の縮図を淡々と映し出される。これを観ると、日本はすっかり勢いがなくなった国であり、いかに後進国かがよく分かる。とは言え、大量生産大量消費の物量に飲まれ、人生を活かされているこのディストピア像に目眩がした。

圧倒的人間観察。これは劇場、大スクリーンで観たかったなと思った。
CHEBUNBUN

CHEBUNBUN