Jun潤

不思議の国の数学者のJun潤のレビュー・感想・評価

不思議の国の数学者(2022年製作の映画)
4.1
2023.05.29

予告を見て気になった作品。
こう見えて(どう見えて?)学生時代数学は得意な方で、今は公式などを忘れているものの数字には強い方の自覚あり、な僕が数学×映画な今作を観るとどうなるのか、期待です。

上位1%の学生だけが通うエリート高校に通うジウは、授業の内容についていくことができず、担任から他の高校への転校を勧められていた。
そんな時、寮で同室のクラスメイトから出前の回収を頼まれ、校舎に侵入したところを警備員のおじさんに見つかってしまう。
出前の中身から共犯の生徒を告げるよう担任に迫られるジウだったが、最後まで口を割らず、1ヶ月の退寮処分となってしまう。
実家では母が一人で暮らしていたため、迷惑をかけることができず、旧校舎の前で佇んでいた。
そこで再会した警備員のおじさんに泊めてもらうジウだったが、解けないままでいた数学の難問集が翌日解かれていたことに気付き、警備員のおじさんが解いたのだと確信した彼は、おじさんに数学について教えを請う。
おじさんも最初は嫌がるも、校内でジウが転校させられそうになっていることを聞き、イチゴ牛乳を報酬として授業を行うことになる。

あぁ〜これはなかなかいいっすね。
韓国ドラマにハマる人が多いのも頷けます。
というのもちゃんと学園ドラマとして成立していたからですね。
自分の家庭のこと、将来のこと、現実と理想とのギャップ、なんだかんだ世話を焼く同級生女子、そして最初は怪しんでいたおじさんに対して徐々に憧れのような感情を持っていくジウと、学校を舞台にしているからこそ展開できるドラマがてんこ盛りになっていましたね。

そして映画ならではの社会問題を扱う重厚なメッセージ性。
おじさんことハクソンは自分の研究が軍事利用されることを嫌がり脱北した。
しかし息子の幸せも願っていたはずなのに北朝鮮に戻ろうとした息子は死んでしまった。
数学に対する後悔と、捨てきれない情熱、そして息子の面影をジウに見出してしまったことと、全てが繋がっていたことがわかる場面は溜飲が下がりましたね。

北朝鮮や韓国の思惑などから、ハクソン自身の身の安全のためにも表舞台に出ないといけなくなった終盤、ハクソンが顔を出したのはどちらの国でもなく高校の数学オリンピックの場。
自分の身の潔白でも、数学の証明でもなく、たった一つの友情を選んだハクソン。
ここまでの過程には、個人的に、ハクソンがジウに教えていたような、解答を得るためではなく何を問われているかが数学においては重要だということが、国の関係者や学校の担任などに欠けていたことの描写を回収してのカタルシスが発揮されていて良かったですね。
Jun潤

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