note

ブラックライダーのnoteのネタバレレビュー・内容・結末

ブラックライダー(1986年製作の映画)
3.1

このレビューはネタバレを含みます

型破りな泥棒クイントは、FBIの極秘指令を受け、悪徳企業から脱税の証拠データを盗み出すことに成功する。偶然出くわした超ハイテクカー「ブラック・ムーン」にひとまずデータを隠し、安全な場所で回収する手はずだったが…。

奇才ジョン・カーペンターが原案・脚本・製作総指揮を務め、主人公に若き日のトミー・リー・ジョーンズ、ヒロインにリンダ・ハミルトン、悪役にロバート・ヴォーンと結構良いキャストが、1台の車をめぐって華麗なる争奪戦を繰り広げる娯楽作。
いかにも80年代の低予算B級アクション映画だが、イイ車に女性に危険なミッションにと、とにかく楽しませようとする姿勢がイイ。
まるで成年男性向けの漫画のようなご都合主義。
憎めない佳作である。

冒頭はハイテクカー「ブラック・ムーン」のご紹介。
ジェットエンジンを搭載し、砂漠を時速500km以上で激走。
燃料は水から抽出した水素でOKという、この時代にしてECOでSDGSな夢のハイテク・マシンだ。
だが、車体のデザインはダサい。
70年代のスーパーカーのような空気抵抗の抑える平べったいボディは、あまりに四角くてお世辞にもカッコいいとは言えない。

この予算と手間暇かけていないやっつけのデザインを見ただけでB級映画と分かってしまう。

続いては主人公の紹介。
黒のライダーズジャケットにブラックジーンズとロックンローラーのような出立ちのトミー・リー・ジョーンズ演じるクイント。
入ったコンビニで少年の強盗に出くわし、「震えてるし、防犯カメラに映ってるし、捕まるからやめとけ」と落ち着き払った態度で説教して追い返す。
「ダーティーハリー」を意識したような肝の座ったキャラクターで、見た目はカッコつけた不良中年である。

どうやら彼は雇われた泥棒で、とある企業からデータを盗み出す。
だが追っ手に追われ、命辛々逃げ出した翌朝、クイントはガソリンスタンドで見つけた変わった形の目立つ車「ブラック・ムーン」の後部にデータを隠す。

頃合いを見て取り戻せばいいと後をつけるが、開発者たちがスポンサーに見せるために訪れた高級レストランで、他の客の高級車もろともクイントの目の前でブラック・ムーンが謎の女性率いる窃盗団に強奪されてしまう。

街中を猛スピードでブラック・ムーンを追うクイント。
ジェットエンジンの加速に振り切られそうになるが、なんとか追いついた矢先、ブラック・ムーンは大きなビルの隠し部屋に消える。
その後 「72時間以内にデータを取り戻せ! 」とクイントの雇い主のFBIに命じられ、ブラック・ムーン奪還作戦が始まる…という流れに。

クイントは、盗まれた高級車を保管してある秘密のビルの設計図を入手。
さらに張り込みの末、謎の女ニーナに近づく。
2人とも危険な仕事をしているせいか、すぐに惹かれ合い、男女の関係に。
知り合ってすぐにベッド・シーンなんて、今なら女性蔑視と言われかねない短絡さである。

2人の関係は窃盗団のボスに知られてしまい、クイントは袋叩きに会った上、ニーナは監禁されてしまう。
開発者チームと手を組んだクイントは、向かいのビルから窃盗団アジトのビルに潜入。
ビルとビルの間にロープを張り、渡って行くスタントはなかなか身体を張っている。
後年の「ミッション・インポッシブル」を思い出す人も多いだろう。
こんな生身のスタントがあってこそ、現代のアクションがあるのだと実感する。

クイントは排気口を移動途中にニーナを助け出し、ブラック・ムーンに乗り込みアジトからの脱出を試みる。
銃撃を避けるつもりが実は誘導されて、そのまま敵のボスの階に運ばれてしまう。
追い詰められたクイントはジェットエンジンを点火。
その勢いのままボスを車で跳ね飛ばして隣のビルへと大ジャンプ。
着地と脱出に成功したクイントはFBIにデータを託して報酬を受け取ると、ニーナと共に去っていく…。

ハイテクカーの存在がSFチック。
そこにお上に与えられたミッションに無頼漢が挑むという物語の骨子、そして音楽はラロ・シフリンだが、電子音が目立つのは製作総指揮のジョン・カーペンター監督作品「ニューヨーク1997」を彷彿とさせる。

また、泥棒がスーパーカーとのカーチェイスやチームプレイでスパイアクションを繰り広げるのは「ワイルド・スピード」の原型か?と思ってしまう。
なんだか多方面に影響を与えたのでは?と思うと、駄作とは言えない。

ただ、ツッコミどころは数限りない。
そもそもの話だが、主人公のバックボーンというもの描かれず、感情移入はしづらい。
また、演技力は申し分ないのだが、ヒロインのルックスが良ければ、無骨な男が美女を獲得する憧れから支持を得たかもしれない。
悪役のボスに至っては、ヒロインのベッドを覗き見する変態だ。
クールという単語とは縁遠い作品だ。

しかし「アクション映画なんだから常に動いていればいいんだよ」と、全ては行動で語られていく潔さがある。
そこが嫌いになれない一番の理由である。
note

note