叡福寺清子

PIGGY ピギーの叡福寺清子のネタバレレビュー・内容・結末

PIGGY ピギー(2022年製作の映画)
3.8

このレビューはネタバレを含みます

体重100kg超を思わせる体型のサラさん.当然ながら,同級生,のみならず地元のチンピラから日常的にイジメを受けています.そんなある日,イジメの主犯格3人が,屈強な男性に誘拐される現場を目撃してしまいます.しかし誘拐犯は目撃者のサラさんを誘拐するどころか,サラさんに優しい行動を取るのでした・・・

本作もまた純愛映画だったのでしょうか,『シェイウ・オブ・ウォーター』や『ボーンズ・アンド・オール』のように.もしくは,ある一人の女性のビルドゥングスロマンだったのでしょうか,『ガール・ピクチャー』や『裸足になって』のように.

サラはずっと受身でした.少しでも目立つような事をすれば,他人から反感を買い自分が辛い想いをしてきたのだから.だから,プールにも誰もいない早朝に一人で出かけたし,店に立つのもあくまで親の命令だったから.ですが,誘拐犯と出会い,日常がくずれてゆく中で少しずつ能動的に活動します.勝手に持ち出した父親のスマホを使って自分のスマホを探しに行く,こっそり抜け出してヤンチャな連中の集まりに加わる.人との交わりを介して,社会との関わりを,人としての正しさを学んでいったのかどうかは不詳ですが,かつて自分をイジメていた二人の少女を救った事が一つの正解だったと思われます.もしかしたら世界で唯一,ありのままの自分を受け入れてくれたであろう男の命と引き換えに.と思ったら,いましたね.ありのままのサラを受け入れてくれる友人が.そんな友人とのタンデムは爽やかな青春映画そのものであり,自分の醜さ故に殻に閉じこもるしかなかった『ザ・ホエール』とはあまりにも対照的すぎて,落涙しそうになった三遊亭呼延灼です.こんばんわ.