ぶみ

PIGGY ピギーのぶみのレビュー・感想・評価

PIGGY ピギー(2022年製作の映画)
3.5
最高の夏、じゃない。

カルロタ・ペレダが上梓した短編小説『Cerdita』を監督自らメガホンをとり、ラウラ・ガラン主演により映像化したスペイン製作のスリラー。
執拗ないじめを受けていた主人公が、彼女をいじめていたクラスメイトたちが謎の男に拉致されたところを目撃したことから取った行動を描く。
主人公となるサラをガラン、サラの母親をカルメン・マチが演じているほか、リチャード・ホームズ、ピラール・カストロ等が登場。
物語は、いじめをしていたクラスメイトが連れ去られる現場を目撃したことにより、サラが一転して反撃に出るようなリベンジホラーとして宣伝されているが、その実は、警察や関係者に目撃したことを打ち明けるべきか、はたまた見なかったことにするのかといった、様々な思いと葛藤するサラの心情が具に描かれた青春ドラマの趣が強く、そこにスラッシャー的なゴア要素が盛り込まれている印象。
加えて、本当はサラを助けたいとう思いがありながらも、サラの味方になってしまうと自分が標的にされるのではないかと怯えるクラスメイト・クラウの姿も至極普通であり、その心情は手に取るようにわかるものとなっている。
また、画面比率が左右が切れたスタンダードサイズであるとともに、ざらついた質感の映像は80年代のテレビドラマかのような雰囲気を醸し出しており、これはこれで悪くない。
ザ・B級作品の配給を得意とするエクストリームなので、本作品も、いじめを受けた主人公が反撃に転じる痛快なスラッシャー作品かと思いきや、思いのほかと言っては失礼ながら、しっかりと作りこまれたサラの成長譚であり、大人こども関係なく、誰もが一度は目にする、あるいは今も加担しているかもしれないルッキズムによるいじめの構図をまざまざと見せつけられ、心が痛くなる怪作。

ママに殺されるわよ。
ぶみ

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