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ガール・ピクチャーのnetfilmsのレビュー・感想・評価

ガール・ピクチャー(2022年製作の映画)
3.7
 学校にも家にも居場所がなく、ずっと2人っきりのクールでシニカルなミンミ(アーム・ミロノフ)と、素直でキュートなロンコ(エレオノーラ・カウハネン)。放課後、ショッピングモールのスムージースタンドでアルバイトしながら、適当に働きながら悪態付く。全てそんな感じの曖昧な2人だがいつも一緒にいる。そんな2人がここではないどこかを求め、男性と一緒にいても何も感じない自分はみんなと違うのではないかと悩んでいたロンコは、理想の相手との出会いを求めて、果敢にパーティーへと繰り出す。そこでミンミが出会ったのは、大事な試合を前にプレッシャーに押し潰されそうなフィギュアスケーターのエマ(リンネア・レイノ)だった。ボーイ・ミーツ・ガールならぬガール・ミーツ・ガールな出会いにミンミの胸は高鳴る。性自認も性的思考もまだわからないが、今はとにかく胸の高鳴る恋がしたいと言わんばかりにミンミは急速にエマと距離を縮めて行く。バスケも何もかも中途半端で情緒不安定なミンミは、エマがフィギュアスケートに打ち込む姿を心から尊敬している。一方でロンコはストレートな異性愛者で、個性的な男の子たちと距離を縮めるのだけど、何だかいつも上手く行かない。

 フィンランドの青春映画は何だか90年代のアメリカ映画の様に妙に甘酸っぱい。他愛もない会話と無邪気な冗談。そしてSEXへの好奇心。恋の意味すらわからず、自分自身の気持ちすらまともに把握出来ない。情緒的というよりは衝動的で、禁欲的というよりもどちらかと言うと刹那的。2人はいつも思ったことを口にするし、自分にも他人にも正直で嘘がない。ドラッグに溺れたりせずに、常に今日よりも明日を夢見る。そんな感じ。だが2人の恋愛は妄想的で、その病巣が次第にわかると痛さが増す。それはエマも同様だ。今時の若者たちは互いを傷つけ合いつつも、決定的な一言は言えずにいる。要は相手と面と向かって話すことに臆病になってしまう。そして勝手に結論を決めつけ、本気になりそうな恋愛から逃げ去る。その理由は母親だったり、コーチとの関係性だったり、SEXのAtoZだったりそれぞれに深刻な理由があるらしい。男も女もない現代は、アセクシャルな繋がりがどうも可能らしいと彼女たちを見ていて思う。どうして意地悪をするの?とエマは彼女なりに考えたはずだが、ミンミは真剣にひたむきにフィギュアスケートに打ち込む彼女が好きだったから。ノンセクシャルとアセクシャルの間を揺蕩うようなラストの3人の距離感が極めて今日的だ。
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