ぶみ

月の満ち欠けのぶみのレビュー・感想・評価

月の満ち欠け(2022年製作の映画)
3.0
生まれ変わっても、あなたに逢いたい。

佐藤正午が上梓した同名小説を、廣木隆一監督、大泉洋、有村架純等の共演により映像化したファンタジー・ホラー。
不慮の事故で妻と娘を失った主人公と、許されざる恋に落ちた恋人たち、二つの物語が時を超えて繋がっていく姿を描く。
原作は未読。
主人公となる男性を大泉、妻を柴咲コウ、娘を菊池日菜子、娘と同じ名前を持つ謎の女性を有村、その恋人を目黒蓮が演じているほか、田中圭、伊藤沙莉、波岡一喜、丘みつ子等が登場しており、演技は皆文句なし。
とりわけ、警察署の霊安室で亡き妻と娘に対峙した際の大泉の演技は素晴らしいもの。
物語は、妻と娘を突然亡くした主人公の姿と、有村と目黒が演じる二人の姿が時系列を行き来しながら綴られていくが、しっかりといつの年代かがキャプションとして入るため、混乱することはない。
ただ、それだけならまだしも、人間関係等についても、しっかりと台詞らしい台詞で全て説明してくれるのは、流石に言い過ぎな感あり。
また、その時系列に合わせて、登場するクルマも当然変化しているのだが、劇用車が集まらなかったのか、1980年代の登場車が、やたら街道レーサー的な雰囲気を漂わせたクルマが多かったのが妙に目についたのと、そこまでクルマに拘っているのにもかかわらず、2007年のシーンで、当時は存在しない型式のトヨタ・ヴォクシーが登場していたのは非常に残念。
それと同様、1980年のシーンで缶ビールが登場するが、当時はまだステイオンタブではなく、切り離すプルトップ式の蓋であったはず。
細かいことかもしれないが、当時を再現するのならば、そういったことまで時代考証をしっかり行ってもらいたいところ。
それができないのならば、原作に拘らず、年代を変更しても良いのではなかろうか。
そんなことが気になってしまったのと、物語の主題とされていることが、私的には全くハマらず、それが当たり前のように受け入れられている世界観はファンタジーだし、結末に関しては、もはやホラーの領域。
そんな中でも、大泉演じる主人公が、唯一正常な反応を示していたのは救いであるとともに、田中圭の怪演は一見の価値あり。
完全にファンタジーに振り切っていれば良かったが、微妙にリアリティのある世界観に入り込むことができず、終始細かな点ばかりが気になってしまった一作。

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ぶみ

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