近本光司

LOVE LIFEの近本光司のレビュー・感想・評価

LOVE LIFE(2022年製作の映画)
2.0
運動神経が鈍すぎる。成瀬の『驟雨』を観たばかりということもあって、あの少年と仔猫を除いては、画面に映る一切がもったりと緩慢な動きをしていて正視に堪えなかった。無邪気にロメールの真似っこをして『ほとりの朔子』を撮りあげた深田晃司はもういない。かといって『淵に立つ』のような画面の緊張もない(浅野忠信と比べたら、むべなるかな…)。
 筋書きからして喪失と再生という主題が据えられていたのはわかるにしても、いまいち何が撮りたかったのかわからなかった。韓国語手話のつかい手が出てくるという共通項を論うのはあまりに安易だろうけれど、しかしハマグチだったらもっとうまくドラマツルギーを演出できただろうにと思わずにいられない瞬間もしばしば(聾者の朴さんを背後に感じながら永山絢斗が独言を吐くところとか、フェリー乗り場で車を後進させながら引き留めようとするところとか)。いきなり舞台が釜山に移送されるくだりをはじめ(まさに驟雨!)、きっと脚本で苦心したのだろうなと思う箇所もそこかしこ。それだけナラティヴに説得力がないということだなあ。棟ちがいの団地の位置関係も、鳩除けのCDの煌めきも、オンラインのオセロ対戦も、わたしのなかではなんのカタルシスも生まれなかった。映画を撮る運動神経って大事なんだなあと、あらためて思い知らされた一本。
 でもひとつ思ったのは、やたらときれいに映像が撮れてるんだなと。カラコレの技術もすごいんだろうけれど、いったいどんなカメラを使ってるんだろう?