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LOVE LIFEのhoshのレビュー・感想・評価

LOVE LIFE(2022年製作の映画)
3.5
新文芸坐にて『偶然と想像』と2本立て。
慎ましく暮らす夫婦を襲った悲劇。それは韓国人の元夫との再会の機を作り…複雑な人間模様と喪失を画く。深田晃司監督作品。

深田監督作品は初鑑賞。すごく計算され尽くしている。不協和音的な会話、想像の斜め上を行く脚本。黄色とオセロの使い方、空間的な団地のデザインとカメラワーク、手話。悲劇をじっとり捉えた対位法の演出。あっと驚く終盤の背中を捉えた場面。ポン・ジュノやフィンチャー、山田尚子を思い出す画面の緻密さ。全く無駄がなく全部に意味がある。日本アニメにも近い。

が、あまりノレなかったな。基本計算され尽くした作品は好きだし挙げた監督たちも大好き。だが、本作はあまりにエクストリームな展開が重なりすぎて主題である「喪失」に向き合う過程と噛み合っているように思えなかった。作り物臭さ感、箱庭感。人物が空虚「すぎる」のかも。理屈とエモーションが一致した感じがない。

事の発端の悲劇を捉えたショットとその前後の人物のPTSDの描写が超痛ましく、リアル。そこから派生する義父母との微妙な人物描写もとても多面的。ここだけでいいと思ってしまった。

韓国人手話の元夫を巡る話が入ることで一気に展開がツイスト。元夫と現旦那、妻の関係が本作に魅力を与えているのは間違いないけど、(風呂場のシーンは素晴らしい)あまりに複雑すぎかつ突飛な展開が多くついていけない部分が多かったのが本音かな。「喪失からの立ち直り」をやるには後半の展開がびっくり箱すぎる。

事の発端となる悲劇のショットが見事すぎた故に起きてる事態な気はしていて。具体的な事故はリアルなのに展開は突飛になっていくので、「話ズレてない?」という感覚に。でも中盤の手話で作られた妻と元旦那の2人だけの世界を遠目から見つめる現旦那を撮った構図はこの作品にしかない歪さを端的に表していて最高でした。

人工的な演技ながら物語の枠組みの外すら感じさせた『偶然と想像』と極めて端正で見所だらけでありながらも、物語や展開の枠に閉じ込められていると感じた本作。映画を考えるのにとても興味深い経験になった。
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