辻村深月の原作小説をアニメ映画化。
中学生のこころは不登校で家に閉じこもっている。すると、部屋にある姿見が謎の光を放つ。中に吸い込まれたこころが辿り着いたのはおとぎ話にでてくるような城。そして、狼のお面をつけた少女だった。お面少女「オオカミさま」は、こころたち合計7人の中学生に対して、「城のどこかに隠されている鍵を見つければ、何でも願いを叶えてあげる」と言うのだが……。
原作既読。不登校の少女の成長物語であり、ファンタジー／ミステリーでもある。いわゆる伏線回収というものが非常に練られた構成になっており、そういうタイプの作品が好きな人にはたまらないだろう。
あまり何も頭に入れない状態で観た方がいいので感想が言いにくいな……この作品が最も刺さるのはやはり中学生だろうと思うが、生きづらさを抱えた少年少女だったことがある人間ならば、きっと何かしら感じるものはあるはず。物語の構造に意識がいってしまいがちかもしれないけれど、他者との距離の取り方の難しさや中学生らしい幼さや葛藤が丁寧に描写された作品でもあると思う。
それだけに、7人を超えるメインの登場人物のコントラストがいまいち甘いのはやや残念。単純に見た目が似ているキャラクターがいたり、（時間の制約があるので難しいのはわかるが）描きこみが浅いキャラクターがいたりするため、原作よりも表層的になってしまっているのは事実。しかも映画オリジナルの改変はほとんどなくて、かなり忠実に原作を映像化しているので、正直なところ「これならば原作を読んだ方が…」と思わないではない。
ただ、やはりそれなりの長さがある原作を読むのは苦手な少年少女もいるだろう。そういう子どもたちは、この映画から入るといいのではないかと思う。そうすればきっと、他のキャラクターのことも知りたくなるだろうから、原作を手に取ってみればいい。
フワッと観るものに希望を与えてくれる物語であることは間違いないので、もし機会があればぜひ。
