せいか

かがみの孤城のせいかのネタバレレビュー・内容・結末

かがみの孤城(2022年製作の映画)
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このレビューはネタバレを含みます

2/9、テレビ放送(「金曜ロードショー」)にて視聴。
原作小説のほうが長らく話題書になっていたので、人気あるんだなー程度の認識は持っていたが、勝手になんとなく表紙のイメージでファンタジーホラーかと思っていたので、全然そんなことないんかいであった。こんなんなのでつまり原作は未読状態である。
本映画作品版はけして悪いとかいうものではないけれど、なんというか方向性を整えてまとめてターゲットも絞ってつくっているという感じが強く、多分、小説だといろいろ感じるものが違ってくるのだろうなあと思いながらずっと観ることになっていた。

内容は、それぞれに事情を抱えた不登校の中学生たちが共に一つのファンタジー空間に好き勝手に集まれるようになったことで生まれる一種のケアの物語というものになっている。原作ではどうだか分からないが、物語のからくりの何もかもはおおよそ前半で分かるものになっており、そこの意外性がどうのというよりもあくまで子供たちが現状を捉え直し、支え合い、前を向こうとするというところに特化した作品づくりになっていたのだろう。

学校なんてあくまで一つのコミュニティーでしかないのに、この閉鎖空間で子供たち(と大人たち)が作っていくくだらない(けれど当事者には全然そんなことはない)地獄とか、そこから外に出てもいくらでも世界は閉じようとする息苦しさとか、そういうのができるだけ丁寧に描かれていて、たぶん、今まさにそうした環境にある子供たちや、そうではなくてもそうした環境に包含されている子供たちがメインターゲットなんだろうなという感じがひしひしとした。ので、私なんぞは過去を振り返りつつ観るというか、それこそ鏡を隔てるほどの距離感を感じつつ観ていた感じだった。もちろん、子供たちの世界を描いているから、大人には関係ない話をしているというわけではなくて、ああいう息苦しさだって脱せなければいつまでもつきまとってくるのは、私自身、骨身に感じていることでもあるのだけれども。ただ、このアニメ映画になった作品の中では、割とそこはもう切り離されたというか、突き放されていた感じがしたので、そういう距離感を抱いて観ていた。描かれてる内容は素敵だとは思う。今この瞬間を支え合おうとか、未来もきっと支え合おうとか。

原作小説だとその辺は特に引っかからないようになっているのかもしれないけれど、ラストで主人公が一人で仲間たちを救うくだりになったところで勝手に彼ら彼女らが自ら語ろうとはしなかった人生を覗き見たりとかはどうかと思った。ピンチなんでそんなんどうでもええわかもしれないけど、ああいう環境でなくても現実でもどれだけ仲良く共に過ごしてこようとも何もかも相手に開陳するということはよほどでないとなくて、どういう場でするにしてもあえて自分で語るということが、それが心の傷だとかに関するものならなおさら重要だと思うんだけど、だから、なんだか雑だなあという感想を抱きながら特に終盤は観ることになっていた。こういうことに関してはまさに主人公自身が母親にどうして自分が不登校になったのかを明かすという語りが発生することで描かれてもいたので、ここでそんな十把一絡げ的な無理やり覗き見る行為で子供たちの内面に触れていくんだなあと思ったというか。

あと、子供たちが滞在することになる城という空間のルールを破った主体である少女に巻き込まれる形で、たまたま不在だった主人公以外の少年少女たちも狼に喰われるということになるのだけれど、夢を叶えるための鍵を見つけるという、冒頭から提示されているミッションがここで、その問題行動を起こした(=現実への帰還を拒絶した)少女を救うために鍵を使えばこの場は大団円になるんだというのも、なんか、少なくともこの映画を観ているという上では妙に話がズレている気がしたし、実際にその少女の手を取って救うという場面で他の子供たちもなんか復活して主人公と一緒になって彼女を引っ張り出すというのも、そういう行為そのものとかの意義は分かるけど、なんか破綻してるよなあという感じが拭いきれなかったので気になった。なんで滞在時間のタイムリミットを過ぎたあとで一人残った主人公がそのままそのタイムオーバーな時間の城に乗り込んで何もないんやとか、そういうのも気になった。
あくまで滞在時間の限定は子供たちがこの優しい世界にあまりにも依存しないため、あくまで現実は鏡の外にあることを教えるためであり、凶暴な狼は現実に生きることを拒絶した子供に訪れる心理的な決定的な破滅の表現みたいなものなのだとは思うけれども。

私の過去にしろ今にしろ別に完全に隔絶されている話というわけでもなく、描かれているもののその寄り添いの温かさみたいなのはわからないわけでもないけれど、なんか、やっぱり、ぶ厚めのガラスを隔てた上で世界を構築しているのを観ていたという感じがずっと拭いきれない距離感だったなあと思った。そのある種の淡々さって、登場人物たちにこちらが寄り添えないからというより、やっぱり、このメディアで描き直す上で発生したものなのではないのかと思う。ので、ちょっと原作小説は読んでみたいような気もする。別作品だけれども原作を書かれた辻村深月さんの著書は読んだことがあって、その文章の雰囲気や肌に伝わるようなものみたいなのは少しは分かっているので、なおさらそこはどうしても思ってしまうものがあった。多分、本来もっと今回違和感や距離を抱いたところはもっとマイルドなものだと思うのだなあ。
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