ターミガン

かがみの孤城のターミガンのレビュー・感想・評価

かがみの孤城(2022年製作の映画)
3.0
2022年12月23日公開
辻村深月の原作小説は未読


鏡の中の城に招かれた7人の中学生男女
その城の中にはどんな願いでも叶う部屋があり、そこに入る為の鍵を探す事を命じられるファンタジー作品。


どギツくはないがいじめシーンや義父による性的暴行を連想させるシーンがあるので、トラウマに苛まれる人は苦手かも。


金曜ロードショーで見たが、あまりハマれなかった。
おそらくエンドロールに必要な“その後”が描かれている……のかな?




とりあえず気になった点としては、主人公の安西こころを軸に現実世界と鏡の中の世界を往来していくんだけど、必要な体験や描写がアンバランスに感じられた点。


こころの不登校を克服するプロセスを、鏡の中の7人で経験しないのか?
お向かいさんの東條萌が引っ越す前になって、そこで腹を割って会話して前向きになる(※要は現実が大事)のであれば、この物語に於ける鏡の中の世界の重要性が極端に低くなってしまうと思うのだけど。


もっと、中学生同士の中学生ならではの視点やスケールで“鍵探し”を通じて、互いにぶつかったり自己開示しあったりして、それぞれが他人や己を知るという事にはできなかったのか。


あとは、鍵探しに春から三月まで期日を設けられて、月が変わる毎に字幕で出されていたけど、そもそも季節の流れが必要なイベントが起こらないので、そこはちょっと不要な演出かと思う。
なんとなく、オオカミ様と燃える狼を書きたかっただけなのかなという印象を拭いきれない。



繰り返しになるが、この設定なら7人が向き合って、吐き出して、ぶつかって、助け合うというプロセスを見せてほしかった。
だって学生時代のアキちゃんが救いがなさすぎる。
あの家庭環境なら、そりゃ17時では帰りたくないし、そんな子に対して「ルールを破ったのでオオカミに食われます」は酷すぎる。
ベタに7人で支え合ったり、生きる糧みたいなものを分け合ったりしてほしかった。


あの環境をアキちゃんはどう生き抜いて、未来(現代)へと至ってきたのかが分からないまま、キタジマ先生の答え合わせをされてもちょっと感情移入しづらい。


そんなこんなで、最終的に頭をよぎったのは『原作の先生は、これをどれくらい納得しているのだろう――』という、2024年現在には少しタイムリーでセンシティブなこと。