えにし

ある惑星の散文のえにしのレビュー・感想・評価

ある惑星の散文(2018年製作の映画)
3.7
かつて一緒に見た景色を、わたしは覚えていて、あなたは覚えていなかった。それだけ、たったそれだけのことなのに、なぜそれをかなしく思ったのだろう。だからいっそ、何もかも違っていればよかったのに、と思ったことがある。わたしとあなた、何もかも違っていれば、出会うことはなかったのに。こんなにかなしくなることはなかったのに。けれど、出会わなければ培われることのなかった記憶があることまでは否定できない。それを否定するということは、生きることを否定することだからだ。それでも、いつかすべて忘れてしまうことを、誰もが知っている。わたしだけが覚えていた記憶も、最後にはきれいさっぱり忘れてしまう。それにもかかわらず人が生きるのは、忘れたくない、と強く思う記憶を、持っていたいからなんだろう。だからルイと芽衣子は出会った。「誰かの記憶に残っていたい」から「わたしの記憶を残したい」に変わった者どうしとして。
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