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シャイロックの子供たちの南のレビュー・感想・評価

シャイロックの子供たち(2023年製作の映画)
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不動産売買や融資に関する詐欺・横領を扱った、銀行員たちの群像劇。

シリアスあり、笑いあり。

探偵ミステリーあり、サスペンスあり。

「倍返し」の復讐劇かと思えば、ほろりと泣かせる人情展開もあり。

様々な要素の同居した賑やかな脚本が良かった〜。

銀行員の仕事とか大きな契約の手続きとか、社会の勉強にもなった!

ベースにあるのは

「ほんの出来心でやった悪事がその後もずっと自分の首を絞め続ける」

という教訓譚で、『ローマンという名の男』や『岸辺露伴は動かない』懺悔室エピソードなどを思い出す。

また、小さな手がかりから大きな陰謀の内応にだんだん迫って行く展開は『ペンタゴンペーパーズ』や『スポットライト』と同様、『大統領の陰謀』の系譜とも取れる。

「数字を出せ!!!」と上司に恫喝されプレッシャーで胃を痛める営業マンたちの姿は、感情移入しすぎて心臓がねじ切れそうだ。

同じく「営業マンの苦悩と悲哀」を描いた『摩天楼を夢見て』のアレック・ボールドウィンねちねち説教シーンを見てるようだった。

フォーカスが当たっている人物の不安感や焦燥感を反映したブレブレのカメラも良い仕事をしている。

事件の黒幕である某人物は『ハムレット』を下敷きにした『悪い奴ほどよく眠る』の岩淵を思わせる外道っぷりだが、本作では同作と違い、悪がそれなりに報いを受ける因果応報の結末を見る。

「悪い奴が安心して眠れると思うなよ」

というアンサーにも思えた。

阿部サダヲを中心にコントや漫才みたいな会話シーンもたびたびあり、劇場で何度も笑い声が起きていたのも印象深い。

シェイクスピア劇を思わせる、緊張と緩和のバランス感に優れた良質なエンターテイメント作品だった。

おすすめ!
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