ぶみ

シャイロックの子供たちのぶみのレビュー・感想・評価

シャイロックの子供たち(2023年製作の映画)
3.5
金か、魂か。

池井戸潤が上梓した同名小説を、本木克英監督、阿部サダヲ主演により映像化したドラマ。
東京第一銀行長原支店で起きた現金紛失事件を発端として、メガバンクの不祥事の真相に迫る行員等の姿を描く。
原作は未読。
主人公となる同支店営業課課長代理を阿部、支店長を柳葉敏郎、副支店長を杉本哲太、行員を上戸彩、玉森裕太、木南晴夏、佐藤隆太、渡辺いっけい、忍成修吾、本部検査部次長を佐々木蔵之介が演じているほか、橋爪功に柄本明と豪華なメンバーが勢揃い。
物語は、冒頭、タイトルにもなっている強欲な金貸しシャイロックが登場するシェイスクピアの戯曲『ヴェニスの商人』のシーンでスタート、以降、現金紛失事件等、金にまつわる様々な出来事が巻き起こる様が描かれるが、そのキャストを見ればわかるように、支店の行員も含め、まあ見事に曲者揃い。
とりわけ、先日観た清水康彦監督『スクロール』でパワハラ上司を見事に演じていた忍成が、本作品では逆にパワハラを受けメンタルをやられてしまう役どころとなっており、その振れ幅と、やられっぷりは中々強烈。
メガバンクが登場する一連の池井戸作品では、概ねメガバンク対中小企業の構図と、メガバンクにいる大物ボスキャラの存在が定番となっているが、本作品では銀行内での不正事件がメインであり、かつ大物ボスがいない反面、誰もが皆小物感を醸し出すという設定となっているのは、これはこれで新鮮なもの。
また、行員ではないところで、橋爪功と柄本明が繰り広げる曲者対決も見どころの一つ。
阿部が主演ということでシリアスに徹することなく、程良く肩の力が抜けた空気感が漂っているが、池井戸作品としてのクオリティは保っており、金に囚われた人々の去就が見逃せない一作。

金は返せばいいってもんじゃないんだよ。
ぶみ

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