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シャイロックの子供たちのクリームのレビュー・感想・評価

シャイロックの子供たち(2023年製作の映画)
3.8
お金を扱う銀行は、シビアな場所。想像はつくが、それ以上に怖い職場でした。絶対、働きたくない。まあ、私の頭や性格では無理だけど。結末の予想もついたけど、思ったより複雑に絡みあっていて、大多数が訳ありなのが面白かったです。ラストも良かったと思います。

ある銀行の一支店。出世街道を外れた課長代理·西木、パワハラ全開の副支店長、真面目な女性行員·北川、成績トップのエース滝野と様々な行員達が、それぞれ事情や思いを抱えながら働いています。 ある日、100万円の現金紛失事件が発生。北川のバッグから当日の日付の入った札束の帯封が発見され、疑いがかかるのでした。



ネタバレ↓



話が複雑なのでネタバレ読んでも解らないかも知れません。物語は西木の目線を中心に進みます。
冒頭「ベニスの商人」の舞台を観賞する銀行検査部の黒田。彼もかつては、銀行の金を使い賭け事をし、バレない様に返却していた。それを目撃したのは、支店長になる前の九条だった。九条は、その時は知らんぷり、が、ずっと覚えていて、後で黒田を脅します。

帯封は、北川に良い感情を持っていなかった女子行員が彼女のバッグに入れた嫌がらせでした。
100万円は、エース滝野の顧客「江島エステート」の社長·石本の10億の融資の返済金が滞り、それの穴埋めとして、滝野が、田端(顧客に持って行くお金)から盗んだモノでした。
しかし、100万円は出て来なかった為、九条支店長、副支店長、西木達の私財で穴埋めし、出て来た事にします。
江島エステートが倒産し、10億円の融資は不良債権となりました。
検査部の黒田達が来ていよいよ本格的な捜査となります。
実は、九条支店長と江島エステートの石本が滝野を利用し仕組んだ罠でした。それを知った西木は、滝野に真相を話します。
西木は相談を受けていた飲み友達の沢崎と組んで、沢崎の問題だらけの物件を九条支店長と石本に破格の安値で売りさばきます。無事売却完了。九条と石本は、不良物件を掴まされたと知り、崩れ落ちます。 大金を手にした沢崎は、西木にお礼のお金を渡します。最初は断る西木でしたが、借金の事を引き合いに出され、受け取ってしまいました(西木は兄の連帯保証人で多額の借金がありました)。
滝野は自首し、3年の刑期を終えて出所。西木は銀行を辞め、行方が解らなくなっていました。ある日、 北川と田端は、エスカレーターを登る途中、西木を見かけます。彼は高級スーツを着て、颯爽と歩き去りました。おしまい。

銀行員というのは大金を扱う仕事。常に誘惑が近くにある。誘惑に負ける男達の悲しい末路。ラストは、西木も誘惑に負け「シャイロック」となってしまったって事かと思います。
きっといつか、破滅に向かうのだろう。
「ベニスの商人」の悪徳金貸しシャイロックの子供達とは、悪徳行員達の事だった。
どんでん返しもありそれなりに楽しめました。
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