こたつむり

シャイロックの子供たちのこたつむりのレビュー・感想・評価

シャイロックの子供たち(2023年製作の映画)
3.9
♪ パッと見はDandy いかにもRich
  飛んで火に入るカモ Big money

ぶっちゃけ地味です。
銀行の不正を描いた物語なんで、銀行業務を知らないと楽しめないかもしれません。「銀行って午後3時に終わりなんでしょ。殿様商売よねえ」なんて仰る向きにはハードルが高いです。

でも、それが良いんですよ。
僕も歳を取った所為か、派手なものより、地味でも中身が詰まったものが良いんです。所謂、質実剛健というやつですね。

そのときに大切なのがリアリティ。
正直なところ、ご都合主義でも良いのです。きっちりと“現場の空気感”さえ流れていれば、物語は瑞々しく輝くのです。

そして、本作はそんなリアリティがありました。
利益を追求する組織の形とか。銀行の応接室で行われる契約とか。ちょっとヤヴァめの築ン十年の建物とか。頑張って“本物”を作ろうとする気概を感じました。

勿論、力及ばず…的な部分もありますよ。
特に本作のキモとなる“印鑑証明”に関しては杜撰も杜撰。契約のプロなら気付かないなんて有り得ない…んですが。

それを許容できるくらいに頑張ってたのも事実。
特に役者さんの熱演は目にも鮮やかでした。柳葉敏郎さんの飄々とした支店長とか。痩せ過ぎた感じが不安に見える佐々木蔵之介さんとか。地味に脇を締める渡辺いっけいさんとか。

主演以外が頑張っている映画は良い映画。
勿論、阿部サダヲさんも良かったです。曲者の印象が強すぎて「本作のような“いいひと”は似合わないなあ」なんて思いましたけど。

でも、それは演技派ゆえの悩みなんでしょう。
ちなみに余談ですが阿部サダヲさんと僕は同じ誕生日なんです。僕も「外見と中身のギャップが激しい」と言われますんでね。勝手にシンパシーを抱いている次第です。

まあ、そんなわけで。
社会派っぽいけど実は痛快な娯楽映画。
本物“っぽい”感じを飲み込むことをオススメします。

そして、最後に暮れの元気なご挨拶。
本年も色々とありがとうございました。気付けばフィルマークスで暮れの挨拶をするのも9回目。プロ野球で言えばフリーエージェントの資格を取れるくらいの年月ですね。よし、FA宣言で移籍しようかな…てなことは置いておいて。来年もよろしくお願いします。
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