半兵衛

平原の待伏せの半兵衛のレビュー・感想・評価

平原の待伏せ(1953年製作の映画)
4.0
映画ファンの知人の薦めで見たけれど、何これメチャクチャ面白い。

メキシコ軍との激戦でアメリカ軍が殲滅したアラモ砦にいながらある事情で生き残ってしまった主人公のグレン・フォード、おまけに家族はメキシコ人に化けたアメリカ人の無頼漢どもに殺されたと知る。訪ねた村では既にアラモ砦から逃げた卑怯者という悪名が広がっており、命の危険を感じた主人公は暴行事件をわざと起こして牢屋に入る。そこで偶然同室にいた男が家族を殺した強盗グループの一員と知り、一緒に脱獄しグループの一員になるが…という物語。

この映画の最大の特徴は世話場や愁嘆場などといったドラマを必要最小限にして、アクション重視で話を展開していることである。主人公が気にしているはずのアラモ砦から逃亡した男という汚名の件はいつのまにか話の隅に追いやられ後半では糾弾していたはずの村人を率いる立場になるし、主人公と家族ぐるみの付き合いがあったメキシコ人の少年のドラマも通常ならば敵対しているメキシコ人を引き取るアメリカ人の葛藤を描くはずなのにこの映画では村の人達は文句は言うもののあっさりと引き取る。最大の見せ場である主人公と彼を慕うヒロインの濡れ場も少し触れる程度で済ませる。話の流れも偶然に次ぐ偶然という、シナリオ教室でやってはいけない見本例みたいなこともやっている。

ではそれが物足りないかというとそうではなく、冒頭のアラモ砦の描写をはじめとしてアクションに次ぐアクションが話の展開が変わるたびに矢継ぎ早に繰り出され、飽きることなく面白く見ていられるのだ。キレキレでスピーディーな編集、60年前とは思えない迫力のあるアクション、そして背景のない単純なキャラクターや全体に漂う乾いたノリも合わさって最高のB級映画体験をさせてくれる。

主役を演じるグレン・フォードの朴念仁っぷりもこの映画に合っている。
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