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シスター 夏のわかれ道のriikoのネタバレレビュー・内容・結末

シスター 夏のわかれ道(2021年製作の映画)
3.9

このレビューはネタバレを含みます

「娘が障がい者なので第二子を希望します」

中国の一人っ子政策が生んだ国民への陰影が物語中盤で示される。
障がいを持っていない"女の子供"が親により障がい者の振りを強要され、"男の子供"の出産のための犠牲となる。

「自己犠牲って才能なのかな」

"犠牲"の捉え方が様々な世代の登場人物ごとに異なり、それぞれが美徳として携えている。
それぞれの世代、そして今も確かに根付いたままの男尊女卑が一人一人に「わたしは正しい」という自信を芽生えさせている。

だから物語に明確な悪人は出てこない。
個々の正しさの押し付け合いが真綿のようにお互いの首を絞め合い、息苦しい描写が続く。
叔母も叔父も従兄弟も彼氏も、それぞれの頭上には自己犠牲の言葉が浮かんでいるのではないか。

ポスターの少女の横顔はラストシークエンスの弟を見つめる表情だった。
世代による軋轢、望まれて生まれた弟、蔑ろにされた自分自身、それゆえに芽生えた夢、そして親への叶わない思い。
このカットは彼女があらゆる葛藤の中で生まれた初めての我儘だったのかもしれない。

自己犠牲からの選択ではなく「我が儘」
我が儘に振る舞えることは当たり前ではないのだ。
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