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ビリー・ホリデイ物語 Lady Day at Emerson's Bar & Grillのbibooのネタバレレビュー・内容・結末

3.9

このレビューはネタバレを含みます

ティザーの紹介文にある「蘇る」という言葉通りの生感のある演技と歌。脚本どおりと思えないくらいの緊張感とグルーヴに包まれた。
1959年、亡くなる4ヶ月前のラストステージという設定だけど、晩年のレディデイは本当にあんな終始ドランクな感じだったのかな。歌えば一級品なんだけど、歌以外のパートはもうヘロヘロ。腕にはたくさんの注射の跡。
歌の間に頻繁にトークが挟まれていき、会話の内容からピアニストがレディデイのテンションを汲み、歌う曲を自然と選曲していく。観客を巻き込んでドランクな演技をするから若干心配する気持ちで見ていたが、演奏は最高なので、ひとときも目を離せない。その生々しさに自分も同じ空間で観客になっているような気持ちになってくる。あっという間の1時間半だった。

ビリーが世間話のトーンでざっくばらんに語る人生がそれはそれは壮絶なので、最終的に涙を流しながら歌うのだが、見えない血も同時に流しながら語っているようにも聞こえてくる。
血の滲むような経験を背景に、それでも彼女は息をするように歌う。歌ってしまうというほうが近いのだろうか。
ビリーに限らず、表舞台に立つ人をファンの目線で見ていると、みんな等しくしんどそうだと思う時がある。なんでアーティストという職業はそれだけをさせてもらえないんだろう。どうして命を削るような苦しみがつきまとうのかな。人生を振り返りもがきながら歌う彼女を見て、そう思った。
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