ずどこんちょ

鋼の錬金術師 完結編 復讐者スカーのずどこんちょのレビュー・感想・評価

2.9
キャラの紹介や設定の説明が不要な分、前作よりもストーリーがあった感じがしました。

国家錬金術師ばかりを狙った連続殺人事件が発生。その犯人スカーは、かつてイシュヴァールで起きた内乱で大切な家族を失った男であり、その殲滅作戦に参戦した国家錬金術師たちに恨みを抱いていたのです。
そして同時に、スカーはイシュヴァールで献身的に治療に当たっていたウィンリィの両親を殺した犯人でもありました。

激しい怒りや憎しみを背負うスカーは、逆にウィンリィの両親の仇でもあります。
スカーは決して正義に基づいて殺人を繰り返しているのではなく、イシュヴァールで起きた悲劇の被害者でありながら、歪んだ憎しみに捉われているに過ぎないのです。
憎しみの連鎖を終わらせるためには、誰かが「耐えねばならない」。
怒り、憤ってもどこかで耐えて耐えて止めなければなりません。そうすれば負の感情で成り立つ世界だけでなく、正の感情による世界も存在できるのです。
本作で、激しい憎しみに「耐えた」ウィンリィは強かったと思います。本当だったら憎しみに捉われてもおかしくなかったのですから。
両親の仇であっても、スカーの傷を治療にあたるウィンリィ。それは、きっと両親もそうしただろうという判断によるものでした。
どんな状態でも自分を失わなかったウィンリィ、素晴らしいです。

それにしても、新田真剣佑は『るろ剣』と連続して、憎しみに捉われた役どころに当たることが多いですね。低く響く声が決して癒されることのない悲しみを感じさせます。

元々前後作というのは分かってる作品ですけど、それにしても随分と変なところで終わりました。映画の前後作ではなく、連ドラみたいな終わり方。
せっかくの人気漫画なので、前後作に分けるにしてももう少し一本の作品としてキリの良いところでまとめ上げてほしかったです。

内山信二が思いの外、目立ってました。前作よりも活躍したのではないでしょうか。