ハル

スイート・マイホームのハルのレビュー・感想・評価

スイート・マイホーム(2023年製作の映画)
3.7
ホラーなのかミステリーなのか。
ガッツリしたホラーだったらどうしよう…くらいの気持ちで鑑賞したけど、ちょうど真ん中辺り。
怖すぎるのが苦手な僕でも何とかついていける、丁度よい塩梅。

マイホームを購入した清沢一家。
大黒柱の賢二(窪田正孝)は悩みながらも家族のために大きな決断をする。
多くの人にとって人生で一番大きな買い物が“家”だよね。
ここの件は凄く良かった。
住宅ローンを抱える恐怖と戦いながら、それでも幸せになる道を掴もうとする姿は純粋に格好良い。
ただ、賢二はスポーツクラブの同僚の女性と浮気中だったりもする…後々これが厄介な事態を引き起こすきっかけに。
浮気は片方が本気になった時点で全てが崩壊するし、そうじゃなくても関係性が外に漏れたらリスクマシマシだから、まぁこうなるのが必然。

そして、清沢一家と関わる個性的な登場人物の面々。
みんな濃い!
販売から建築まで請け負い、一級建築士持ちの親切な本田さん(菜緒)
本田さんに顧客を取られたと思い、執拗に絡んでくる上司の甘利(ハウスメーカーはボーナスにダイレクトに跳ね返ってくるので、気持ちはわかるけれど…)
「この家の至るところにヤツがいる!」という謎の警告を発し続ける賢二のお兄ちゃん(窪塚洋介)
甘利の気持ち悪い素振りの数々はミスリード感たっぷりで逆に面白い。

超常現象の類なのか、誰かの作為的な罠によって人が死んでいるのか…
賢二の抱える閉所恐怖症の原因も絡み合いながら話は進む。
ミステリー要素を強く含む作品なので、ネタバレに繋がる部分には触れられないけど、恐怖を煽る演出や役者陣のお芝居は凄く良かったと思う。

ちょっと頼りなさそうな旦那さん役の窪田正孝は適役に感じられたし、窪塚洋介も味のある存在。
蓮舫美沙子と菜緒も役柄と元々もってる雰囲気がピッタリ。
ちなみに本作は俳優の斎藤工がメガホンを取っている。
インタビュー記事を拝読すると、撮影中の役者陣への配慮が完璧だったらしい。
彼が監督ならば、“演者のやりやすい環境構築”に注力するだろうし、監督と演者のリレーションシップの強さは優れたモノ作りには不可欠だよね。

全体的にチープな邦画感はチラつくものの、推理要素とヒトコワの融合を存分に楽しんだ。
『スマホを落としただけなのに』等のジャパニーズスリラーの雰囲気に馴染んでいる方は嫌いじゃないはず。
個人的には蓮舫美沙子の切れ味鋭い芝居に惹き込まれたので、鑑賞予定ありましたら注目してみてください。
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