囁きのwhisper

スイート・マイホームの囁きのwhisperのネタバレレビュー・内容・結末

スイート・マイホーム(2023年製作の映画)
3.7

このレビューはネタバレを含みます

主役級から脇役まで幅広くこなし、そしてかなりのシネフィルでもある映画人・斎藤工が”家ホラー”に挑むということで、どんな描き方になっているのか楽しみに鑑賞。

終始不穏な雰囲気は漂いつつも、直接的なびっくり演出はほとんどない。むしろ主人公自身も色々な問題を抱えていて、それが外部から暴かれているのではないか?というサスペンス、ミステリー要素が強い。

“視線”を重要な要素にしているようで、舞台となる”まほうの家”のカメラシステムや、「監視されている」ことを恐れる主人公の兄、そしてギョッとするラストにつながる”赤ちゃんの瞳の反射”など、「見る見られる」の関係性を意識しているのが伝わる。

ただ、その布石が面白さに繋がったかというとちょっと惜しいなというのが正直なところ。
例えば黒幕となる住宅設計士の女が、実はクローゼットから登った屋根裏に住み着いていたのが明かされる件。
これは日本版「パラサイト」的な要素としていいとは思うんだけど、「あいつはあらゆるところにいる」的な兄の発言の期待感と裏腹に、結局普通の部屋から登った屋根裏にいただけっていうのが残念。
折角設計まであの女がやっているのだから、もっと住居全体にあいつの縄張りがあってあらゆる場所から現れるみたいな、驚くような飛躍があっても良かったんじゃないかと思う。
現実味を重視したのだとしたら、そもそもあんなサイコ女をいつまでも働かせておくなよってのはあるし、もうちょいはっちゃけて欲しかった。

ただ、ラストの恐ろしさは素晴らしい。
直接的なビジュアルまでは流石に映さないものの、子供、しかも赤ちゃんに対する暴力を「斎藤工」のブランドを掲げる映画で描くのは勇気のいることだと思うし、今後の監督作への期待感も高まる結末だった。
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