七沖

男たちの挽歌 4Kリマスター版の七沖のレビュー・感想・評価

4.6
〝〈香港ノワール〉の最高峰にて、語り継がれる伝説。〟
警官になる夢を持つ弟キットのため、兄のホーは彼に秘密にしていた極道から足を洗うことを決意する。だが取引きでアクシデントがあり逮捕されたホーが出所すると、警官になったキットは兄の素性を把握しており、ホーを決して許してはくれず…というストーリー。

昔ビデオで観たっきりだが、その時はあまり印象に残っていなかった。というのも、自分にとって最初のジョン・ウー体験は中学生の頃の金ローでやっていた『ブロークン・アロー』で、その次に観たのが『ハードボイルド 新男たちの挽歌』だ。派手なアクションを期待して観たら、意外と地味だな…という感想だった。

そもそも、中学生にこの映画は早すぎたのかもしれない。
大人になった今、映画館でやってると聞いて観てみたら、男たちのすれ違いに思わず泣いてしまいマスクがヤバいことになった。なんて切ない話なんだ…。

とにかく男らしさが溢れてる。
引っ込みがつかずなかなか相手を許せないところ、何歳になっても他愛のないことで大はしゃぎできるところ、そして、負けると分かっていても引かないところ……かっこいいところも情けないところも含めて、シビれる男の生き様が約100分の上映時間に詰まっている。

これはチョウ・ユンファに惚れる。
アジア人がロングコートにサングラス、マッチ棒を加えてカッコいいという奇跡のコラボレーション。ふざけている時の笑顔と、銃撃戦中のマジ顔のギャップがいい。

アクションシーンが地味だという感想は昔観た時とあまり変わらなかったが、それでもあの敵の物量や、一瞬に多額の予算をつぎ込んだであろう夜の大爆破は、映画館で観ると特別な思い出に変わる。
『ハードボイルド 新男たちの挽歌』や『ブロークンアロー』で観た台車に乗ってスライドしながら銃をぶっ放すのは、もう挽歌一作目からやっていたのか!今更ながら発見だった。

これ、脚本を書いたのがジョン・ウーとなっているが、監督だけではなくストーリーテラーとしてもすごい人だ…!
ラストの弟の決断には思わず唸った。言葉ではなく、やりとりで兄弟の和解が伝わってくる。
本当に今更だが、後世に語り継がれる名作だというのも納得だ。
七沖

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