RyoS

私のはなし 部落のはなしのRyoSのレビュー・感想・評価

私のはなし 部落のはなし(2022年製作の映画)
3.7
「牛を飼っているから、差別されるわけじゃない。差別は文化的なものである」と言っていたが、差別が文化的なものであるならば、それもまた文化的に解決することができるのではと思うけど、そうはいかないのが現実。

一番斬新だったのは武士の血筋だという人のインタビュー。普段は仲良く暮らしているが、自分や子どもが結婚するとかいった場合は、部落はダメだと言う。その人はそのような差別が悪いことだと分かっていながらも、血筋という点で遺伝子レベルの拒否反応を示していた。インタビューからは、生まれたときからの教育、環境の影響が強く表れていたのがよく伝わった。

その他のインタビューでも散見されたのが、「社会が差別を作り出してきた」ということである。子どもの頃はなぜ差別している/されているのか分からなかった、そもそも差別を自覚しなかったという人が多く、差別意識は後天的に作られたものというのがよくわかる。

そのような後天的に作られる差別を防ぐ一番の方法は教育なのだが、障がい者すら排除する現状では無理だろう。そうやって交流が無くなることで相手への理解が不足し、自分にとって異なる存在になってしまう。

また、社会制度が差別に暗に加担している例として天皇制を挙げていたが、トークショーでの教授のお話を聞いてとても腑に落ちた。天皇制というのは血筋、血統主義の頂点に立つもので、天皇制があるから差別が生じるわけでも、天皇制を廃止したら差別が無くなるわけでもないけど、天皇制がある時点で血筋を重視するという価値観は一定以上社会に残り続けるのだろう。

さて海外に目を向けると、血筋を重視する社会・身分制度のある社会は大半であり、一昔前まではヨーロッパでも、インドでも、アメリカでも、どこでも身分制度と血筋による差別や争いが溢れていた。社会制度としては無くなっても人々の中には残っているあたり、「人間」という生物はもう生物学上そういう生き物なんだろうなって。そんな中人権を意識する人がいるというだけでも希望なのかもしれない。
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