エリ

私のはなし 部落のはなしのエリのレビュー・感想・評価

私のはなし 部落のはなし(2022年製作の映画)
4.3
3時間以上に及ぶドキュメンタリー。

様々な立場の人で構成されており、情報量がかなり膨大。
今までよく知らなかった、けれど現実に起きていること。

穢多を更に蔑称としてエッタと呼ぶことも知らなかったし、何故か私は部落問題、被差別部落民という言葉も意味も知っていたのに、「同和」という言葉はこの2~3年で知った。
一見穏やかな字面に見えるけれど、逆に残酷な気がした。どちらにせよ同和≒部落なら、部落という言葉では何がいけなかったのか。

このドキュメンタリーを撮ろうと思った監督、
実名と顔を出しインタビューに応じる、辛い思いをしてきた被差別側の人、
被差別側ではあるけれど部落出身であること自体にあまり自覚がなく他人事に感じている若者、
自分には部落の友人がいて表面上は普通に付き合っているからと顔を出せない差別する側の人、
研究者、
興味本位で地域を暴くような出版や探訪を続ける人間、
あまりに多くの人達の意見が入ってくる。

自分の考えがまとまらない。

「差別はいけない」
言うは易し、行うは難し。
知らず知らずのうちに誰しも差別をしている。劇中で、被差別側の人すらも、自分も差別をすることがあると言っていたぐらい。
もちろん私もきっと様々な場面で差別をしているはず。

だから、部落解放同盟の人が言っていた「本当は当事者だけではなく、当事者では無い人が声を上げていくのがいい」といったニュアンスのこと、これは自分には到底難しいと思った。


答えが導き出されるでもなく、ただ現状をありのままに見せてくれたこのドキュメンタリーに出会えて良かったと思う。

江戸時代に、天皇をより崇高なものにするために都合よく作られ、運悪く振り分けられてしまった穢多非人の身分も、柵があるわけでもないのにその地域から出ることのできない部落も、気にしない若者が増えていくことで、いつか風化していく時代がくるのだろうか。
エリ

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