ベビーパウダー山崎

螢火のベビーパウダー山崎のレビュー・感想・評価

螢火(1958年製作の映画)
3.5
夫と妻と子供この美しい三角形こそが家族で、この図式(こだわり)を崩すことによって五所の映画が始まる。淡島千景と伴淳三郎に子供が産まれないのが根底にあり、その不在を埋めようと姉の子供を育てたり若尾文子を子供として迎え入れたりしている。ある意味、疑似家族としての体でやり過ごしていたわけで、子供がデキたという愛人の話が嘘なのも当然、若尾文子が坂本龍馬と家を出ていってしまい、残された淡島千景に伴淳三郎が「赤ん坊を産んでくれ」とせがむ、二人っきりになったこの瞬間こそが真実で、これからは正しき「家族」として再生できるのではないかとの(後ろ向きな)希望で一応は物語が閉じている。終盤の淡島千景が泣いているのを見て「気持ち悪いのかい?」みたいな伴淳三郎の適当な台詞はアドリブだと思う。