セサミオイル

さかなのこのセサミオイルのレビュー・感想・評価

さかなのこ(2022年製作の映画)
3.8
特徴的な点その1
クスクスレベルでなく思わずブーーッと吹き出してしまうレベルの笑いが何個もある。コントをやってる訳でもなし普通の映画でブーーッと吹き出す事なんてそうそうないのにこの映画は何回もある。観てる側は考えなしにゲラゲラ笑うだけだが、それだけに作り手は高次元な気がする。

特徴的な点その2
出てくる女優に惚れてまうやろ。
まずお母さん役の井川遥。映画の趣旨を大きくはみ出てしまうほどの美貌。物語の中に入り込めなくなるが眼福でもある。
大人になった狂犬が連れてきた女。
憎まれ役なのだが一目惚れするレベルの美貌。
吸い込まれそうになった。
役にもはまってた。
ミー坊の幼馴染モモコ役の夏帆。
全シーン全カットすべて美人に映ってた。
モモコってゆうか夏帆そのものだった(笑)
3人とも美貌すぎる。

特徴的な点その3
のんの魅力。
役にハマった時の彼女は強烈に役に命を吹き込む。実在感を越えて強い説得力と納得感を自身が演じるキャラクターや物語の世界観にまで与え、より多くの観客が彼女を主役として余りにもすんなりと認めてしまう。
例えば他の女優がこの役をやったら?とかこの役はあの女優を当てた方が良かったんじゃないか?とか大なり小なり頭を掠める事もしばしばあるが、のんさんが主役になればそういう気持ちにまずならない。気付かない内に主役として認めているという感じ。そもそもさかなくん男なのにそんな疑問は1ミリも出てこない。
声優で言ったら野沢雅子さんの領域か?野沢さんも演じる役は大体男なのに誰もキャスティングに違和感を持たない。

さておきのんさんは主役しか出来ないんじゃないかとさえ思う。「あまちゃん」「この世界の片隅で」で主役をこなして2つとも異例の大ヒットとなったが下手したら監督や脚本家以上に作品を左右する影響力があるんじゃないか?
時空が歪む系のモンスター級。

特徴的な点その4
遅効性。
もちろん鑑賞中は笑いあり美人あり主役すごいで楽しいんだけど、伝記と思いきやファンタジー要素も多分に含み鑑賞直後はキツネにつままれたような感覚になり、こんなもんか?と思ってしまった。ところが1時間後じわじわと観て良かったなという思いが湧いてきて3時間後はめちゃ良かったというところまできた。
説明不可な不思議な現象が起こった。
監督は魔法使いなのかもしれない。

特徴的な点その5
世界観
現実の日本からメルヘン的な部分を摘出して更にデフォルメしたような世界観。
これ普通現代だったら現実はそんなに甘くねぇと文句言われておしまいなんだけど、この映画においてはそうならない。
ミー坊が見ている世界は現実よりもトゲトゲしてないという事だと思う。そう思うとメルヘンも筋が通ってるんだと思う。現代社会にあるトゲトゲは帽子のハコフグに集約させてミー坊が目指す世界観にはトゲトゲはない。ミー坊を取り巻く人間たちもミー坊と触れ合ってる時間は感化されてトゲトゲがなくなる。この映画がメルヘン的なのはそういう理由があるんじゃないかと思った。それで僕らもミー坊に感化されて心が洗われた気になるという。

総評
女優に惚れそうになったり大きな笑いが何度も起こったりするのって映画では珍しいが実は演劇だと当たり前と言って良いほどよくある。かと言ってこの映画は演劇に寄せた作品では決してない。ならば何故演劇特有の生々しい空気感がこの映画にはあったのか。
ひとえに監督のエゴが無かったからだと思う。少なくとも監督の俺が俺がみたいな余計な自我が表面化されてはいなかった。ひいてはそれがスクリーンだとかカメラだとか役者と観客の間に介在してるはずのあらゆる要素を取っ払ったかのように透明化させるまでに至り、結果あの生々しい空気感が生まれたのかと思う。
同監督「滝を見に行く」もおすすめです!

とても残念な補足

鑑賞した後宇多さんのレビューで知ったんだけど脚本家が女癖悪くて現状10人程の若手女優たちから苦情がとある女性監督に寄せられてるという。内容を見る限り昨今明るみになってる明らかな性加害・セクハラ・パワハラというには内容はソフトなんだけど苦情や告発をされてる時点でアウト確定だし、内容がソフトという点には普通のパワハラ・セクハラよりよほどタチが悪い部分があると感じる。ヌメッとしていて陰湿だ。立場を利用していないと言いつつ上下関係をはっきりと理解して行為を繰り返してたので卑劣としか言いようがない。
表向きには自由恋愛に見せかけて実際は若手女優たちを食い物にしていたので周りも気付きにくかったんだろうと見てとれる。実際やられた本人も渦中では被害意識が曖昧だったみたいだ。世間的には単純にモテ男という捉えられ方をされてたのかも知れない。
僕はこういう輩が大嫌いだし然るべき罰を受けてもよいと思うが、表向きには分かりにくかったという点を考慮すると彼を起用した製作チームを責めるまではいかないかなとも思ってます。問題が明るみになったのは今年の春くらいなんですけどね。。。
まことに残念。

ついでに言うと邦画界はこんなんじゃダメだと思うぞ!