りょう

さかなのこのりょうのレビュー・感想・評価

さかなのこ(2022年製作の映画)
4.2
今週は休暇をもらっていて、やっと楽しみにしていた「さかなのこ」を鑑賞!

「あいつ、何かの主人公みたいだな」と「普通って何?」という趣旨のセリフがとても印象的だった。

ミー坊自身が、歳を重ねるにつれて、水族館でもダメ、寿司屋でもダメ、自分が普通ではないかもと自覚し始める。

子供と一緒に転がり込んできたモモコと暮らし始めるが、自分がもっと稼がなきゃ、と大黒柱になろうとして、一般的な「普通」になろうとしていて、それを察知してモモコはいなくなったのかな。ミー坊はミー坊でいて欲しかったのかな。

自分の魚の絵を認めてくれる人が増えて、テレビの仕事をしているヒヨに声をかけられ、「気付いたら今ここにいました」とテレビで語る姿を見ると、単純に好きを突き詰めてきただけじゃなくて、色んな思いをしてここに居るんだと感慨深い。それとミー坊が出会った人たちが、ミー坊の魅力を理解していて、ミー坊の人生を支えていることが素晴らしい。

Wikipediaによるとさかなクンの好きな言葉は「一魚一会」。魚だけではなく、「一期一会」の縁がミー坊にはとても大切な影響をもたらしている。

それと、子供にあれはやっちゃダメ、とか、これをやりなさいとか言うのは簡単だけど、あなたはあなたのままでいい、と突き放す方が勇気いるよな。お父さんが厳しめに描かれていたけど、そういう両親のバランスがなかったら、紙一重だった気もする。かと言って母親が放置していたかというとそうでもなく、見守ってる感じがすごくする。

この話の中では両親は離婚?していたみたいだけど、寿司屋でのお母さんが明かす家族の秘密で、家族の暖かさも感じた。

大人になったヒヨとゆりえとミー坊のレストランのシーン、良かったな。魚博士になることが夢だと言ったミー坊を笑ったゆりえにヒヨが納得できない、ということを表情だけで感じさせる柳楽優弥のうまさよ。本当はグラス同士をぶつけちゃいけない乾杯をミー坊と交わす!

脇を固める役者も良かった。総長やカミソリもみーはもちろん、海人の店長の宇野祥平、あと何気に水族館の先輩にかがやの賀谷、ローカルテレビの司会にシソンヌ長谷川!賀谷のコントから飛び出てきた感じの雰囲気と、長谷川のローカル感!笑

周りの人たちがこの人はこのままでいてほしいと願う人、その人自身が「主人公」であり続けて欲しい人、それがさかなクンであり、のん自身であるような気がする。そういう意味でこのキャスティング自体が素晴らしいし、主人公をのんに決めた時点で半分くらい作品を決定づけた気がする。

なかなか巡り会えないオンリーワンな作品だと思いました。紙一重で警察に捕まったかも知れない人物が、ここまで偉大な人物になったのは、彼自身の「好き」と周りの人の暖かい支えがあったからこそ!

エンドロールで題字、魚の監修、サックスなど、ちょこちょこ出てくるさかなクン自身の名前。やっぱり多才で愛される人物。原作となった自伝も読んでみたいな。
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