さかなクンの自伝的映画でありながら、のん(能年玲奈)が演じることで抽象性が増し、1つの映画としての完成度がとても高かった。
ミー坊(のん)の主観で描かれることで御伽噺っぽい世界観で笑えるシーンが多い。
しかしこの世界観は、自分たち(観客)へ異化に作用する事で対比的に他のキャラクターや、その他の所謂「普通の人」を明確にする。
個性とは残酷であり、1つ間違えれば変出者という社会的レッテルを貼られる。
また、個性を伸ばすことによって犠牲になった「普通の人」も無視できない。この映画の終盤、ミー坊のお母さんが実は魚が嫌いと告白したシーンも一見笑えるが、その結果家族が壊れたという代償も描かれているのは、中々に残酷だと思う。
個性を崇拝する現代は残虐であり、その下には無数の"普通"が転がっている。
ミー坊ほどに人生を捧げれるものも、それに熱中するエネルギーもない、その他大勢の観客は何を思うか。
ラストシーンではミー坊の顔がクローズアップされ、今までフォーカスされていたミー坊から、ミー坊の眼差しによって観客に向けられドキっとした。
少なくともこの映画は登場人物の誰の生き方も否定していない。
と言ってもこの映画の最大の魅力はミー坊演じるのんの奇天烈さだろう。
