カルダモン

さかなのこのカルダモンのレビュー・感想・評価

さかなのこ(2022年製作の映画)
3.9
いつしかお茶の間に浸透していた謎の生物さかなクン。TVで注目された当初は魚好きであること以上にキャラの強さが前面に押し出され、本性がよく見えなかったけれど(制作側の意図も少なからずあっただろうが)、いまやエキセントリックなキャラさえも通り抜けて自然と受け入れられている。むしろあの熱量で語ってくれるからこその説得力は唯一にして無二。中学生の頃に飼育していたカブトガニの人工飼育成功に始まり、絶滅したと思われていたクニマスの生息を発見するエピソードなど、おそらく知識だけでは辿り着けない湧き上がる愛情の賜物ではないだろうか。

そんなさかなクンの自伝的物語をのんが演じると聞いたとき、驚きと同時に納得した。どう言えばいいのか掴みにくいのだが直感として自然に感じられた。配役が決まるまでには色々と紆余曲折はあっただろうし、賛否も当然ながら想定済みだっただろうけれど、最優先されるべきさかなクンの海洋生物に対する熱と、何者かわからない不可思議さと、演じるに足るような説得力の持ち主を考えた時に、のんほどの適任はなかなかいないように思う。だから私としては冒頭の[男か女かは、どっちでもいい]という、どこに気を使ってるのかわからない文言さえ余計に感じてしまった。

劇中では[さかなクン]という愛称は出てきておらず、あくまでもミー坊の物語になっていた(はず)。さかなクン本人も近所に住むギョギョオジサンという変人として登場しており、これがまたサイキックで不穏な感じがしてたまらないのだが、全体を通してほっこり爽やかな映画で、食後にスルスルと観てしまった。うっすらとした影もあるのだが、それでも熱量が上回るし、周囲の環境も巻き込んで変えていく。ミー坊が嬉しそうに捕まえたタコをみんなに披露し「これ飼っても良い?」なんてキラキラしていた刹那、父親が「タコはこうやって締めるんじゃー!」ってアスファルトに叩きつけるショックシーン、直後に浜焼きにしてみんなで美味しくいただく一連の流れ。さかなクンが「可愛いお魚ちゃんですねぇ〜」なんて言った直後に美味そうに食レポする姿などを思い起こし、生態に関わる研究の一方で、食文化の側面も同時に伝わる良き場面でした。

不良たちとのワチャワチャ感、キャラも含めて素晴らしい!



吹奏楽部を水槽学部と勘違いして入部したという強すぎるエピソードからここまで繋がる
スカパラ×さかなクン(3:15)
https://youtu.be/1zKo_I8VhkA