すみれ

さかなのこのすみれのネタバレレビュー・内容・結末

さかなのこ(2022年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

さかなクンが魚を好きでいられる優しい世界に祝福あれ。

さかなのこ、ようやく観ました。
さかなクンが好きで、憧れで、近所で喜び勇んで観にきました。
映画そのものは面白かったと思います。
自分と重ねたり比べたりして色々考えてしまい、苦しくなってしまいました。

以下は自分のための感情の吐露です。

主人公が羨ましいと思ってしまった。普段他人を羨むのはイヤだと思っているのに。羨むくらいなら自分もやればいいが信条なのに。
好きなものにのめり込め続ける一途さが羨ましかった。新聞を作ったり絵を描いたり、知識を形にした積み重ねが眩しくで仕方ない。今の自分の中途半端さが情けない。
主人公に向けられる周囲の人の感情が自分にも突き刺さる。「こいつ変だ」「非常識」「バカじゃないの」口には出してないけど、そう思われてるんじゃないかと私が思ってしまった。「良い年した大人なのに」「普通じゃないよね」刺さる。気にしない人になりたい。かといって主人公が面と向かって言われても全く気にせず、ニコニコしている様子がもっと刺さる。認知できないのが痛々しいと思ってしまった。他人に理解を示されないことを恐れている自分に気がつく。他人に拒絶される、理解不能と判じられることが怖い。本当は主人公みたいになりたいのかも。負の感情に鈍感で好きなことを追い続ける猪突猛進さを、愛しいと思う。一方で、主人公を見下してもいる。私が苦悩して頑張って学んだ社会性を持たない主人公が妬ましいのだ。表情や空気を読めないがゆえに自分のワールド全開で開けっぴろげでいられるのが、羨ましい。私だって知らないでいられるなら、知らずに幸せに生きていけるなら、知らないままでいたかった。一度知ってしまったら、無知だった頃には戻れない。じゃあ比べるほどの社会性があるのかと言えばそうではないのだ。急に自分の将来に不安を感じて憂鬱な気分になる。なんとなく好きなことをしてご機嫌に暮らせている自分も大概阿呆に見えるだろうと思ってしまった。収入も安定しないし計画性がないし楽観的すぎるし何も為せていないのではないか、と。

…うん、ここまで書いて、ようやく開き直ってきた。この楽天的な性分こそ自分の持ち味なのだろう。羨ましいと思うなら、そこにこそ自分の求める道がある。さかなクンほど突き抜けた存在にはなれないと、好きを晒す姿を嗤われたくないなんていうプライドが邪魔をする。こんなものかなぐり捨ててしまえばいい。捨ててしまえ。笑われたっていい。馬鹿にされてもいい。自分が好きなものを好きでいる自分を、自分が一等好きでいたい。好きなものを好きだと言える自分が好きなのだから。私が理解したい人々の声に耳を傾け、理解されたい人を明確にして意図を紡ごう。私は決して多くを抱えられないのだから、私の手の届く範囲を幸せにしていこう。
これからもご機嫌に生きていこう。

さかなクンが魚を好きでいられる優しい世界に祝福あれ。
すみれ

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