おなべ

さかなのこのおなべのレビュー・感想・評価

さかなのこ(2022年製作の映画)
3.8
◉「ギョギョッ!」でお馴染みの〈さかなクン〉原作「さかなクンの一魚一会〜毎日夢中な人生〜」を基に映画化した、面白いと話題の作品。

◉海の生き物に興味が絶えない“ミー坊”は、普通とは違う我が子を心配する父親とは対照的に、献身的に応援してくれる母親のおかげで、のびのびと育っていた。しかし、高校卒業後、大好きな魚の仕事に就こうとするも、なかなかうまく馴染めずにいた…。

◉「人と違う」「普通じゃない」事がネガティブな事ではなく、ポジティブな方向に進んだパターンの物語。もちろん、マイノリティの人々が抱える悩みや人には言えない葛藤を一生懸命乗り越えて。それらを乗り越えるため、乗り越えてしまうほどの気力・活力・原動力の正体こそが“好き”の力だと思う。ミー坊の海の生き物に対する“好き”が、社会の障壁や周りの人の厳しい視線をも乗り越えて、今の〈さかなクン〉としての唯一無二の立ち位置がある。

◉個性や多様性を尊重するようになった今の時代には受け入れられるのも頷けるけど、もっと昔だったらどうだろうと思ったり。ただ、“好きに勝るものなし”と心底思わせてくれる心温まる素敵な作品で、何よりこの話が実話を基にしているという事がそれを証明している。もはや、〈さかなクン〉を(バカにして)笑うような人のほうが少数派なのでは…。

◉『南極料理人』『横道世之介』の《沖田修一》監督。どれもユーモアに溢れ、前向きになる作品ばかり。別の作品も観たくなった。












【以下ネタバレ含む】












◉チンピラと“カブちゃん”というネーミングのギャップが余りにも凄すぎて…。チンピラ、ナイフ、カブちゃんのくだりが最高に面白かった。《柳楽優弥》演じる幼馴染が、都会育ちのお嬢にミー坊を笑われて怒るシーンも好き。

◉お店の外壁に描いた海の生き物のイラストが、集客に貢献したシーン。これは成功例だけど、同様に自分の店内の壁紙を客に好きに描いてくれと言ったものの、下ネタや下品な絵を描かれトンデモない事になったとある店主の悲しい話を聞いた事がある。

◉「好きなことだけで生きていく」「好きなことをやらせる教育方針」が注目されつつある今、本作もまた、その流れを助長する作品になるかも…。
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