真田ピロシキ

ブルドーザー少女の真田ピロシキのレビュー・感想・評価

ブルドーザー少女(2021年製作の映画)
3.8
試される観客。責めていい理由ならいくらでもある主人公。粗暴でこれ見よがしに腕にタトゥーを入れて威嚇する。お互いろくにコミュニケーションを取らず、行動は杜撰。"賢明"な人たちは主人公の"ツッコミ所"を指摘するだろう。バックアップも用意せずに証言の入ったスマホを持っていくなよと。だけどこれで正しいんだよ。彼女はジョーカーみたいな作品世界が全力で味方してくれるご都合主義な犯罪界の道化師(笑)なんかじゃない。ただの未熟な一般人に過ぎない。札束で放火しようとして失敗するのはヒースジョーカーへの皮肉に思えてくる。

常日頃から不機嫌極まりないその顔にウンザリして、職業訓練での性差別的な助言への態度があんまりだと思うかもしれない。「そんな態度じゃ人は聞く耳を持たない」なんて言いたくなるかもね。クソ喰らえトーンポリシング。態度の問題で聞く耳を持たない人間は結局別の聞かない理由を探す。お父さんは酒飲みでギャンブル好きのかなりしょうもない人間。だから助けなくてもいいとな。ふざけんな。好ましくない人間だろうと理不尽な目に遭ってるのを見捨ててはいけないし、あなたは見捨てずにはいられるか?本作は『わたしは、ダニエル・ブレイク』や『すばらしき世界』と同じ問いを投げかける。寛容というか真に平等な心を抱けるか。

気持ちが良いのは泣き寝入りして悪徳会長のお恵みを待てと忠告する叔父さんをうるせーと突っぱねること。金も力も人脈もない。最初から勝ち目がないなんて分かりきってる。それでも心まで屈服してしまっては人間として生きていけない。失うものがないなら思いっきりやっちまえ。無敵の人のパンクなブルドーザーが破壊する先にようやく一条の光明が挿す。