かーり長文

宇宙探索編集部のかーり長文のネタバレレビュー・内容・結末

宇宙探索編集部(2021年製作の映画)
4.5

このレビューはネタバレを含みます

最後でもってかれた、ぜんぶ、もってかれて、年末に2023ベストムービーにすべりこんだ。

時間が経っても、経つほど、いい映画だった。
観れてよかった。
初めていく小さな映画館で観れたのもよかった。

冒頭の宇宙服が切り裂かれるとこはもう、ゴーゴリの『外套』だ。アカーキー・アカーキエヴィチだ。あんなかなしいことあるか。
しかもこれが冒頭。序の口。
ずっと怒られるし、ずっとこんなんが続く。付いてきてくれる人も、同じ気持ちというわけじゃない。好奇心か、同情か、なにか。その人たちも何か答えを探してるのか。とにかくずっとつらい。
この怒ってる人なんでずっと付いてくるの。
ああなんてつらい映画を年末に選んでしまったんだ、どんなに道を進んでもいっこうにしっかりする気配がないタン編集長。やばいやつに騙されるし。あああもうだめだいたたまれない。かたはらいたし。
でもたぶん、来てしまったから引くに引けないとかじゃない。
この情報がもし本当だったら?後悔しないか?

後悔しないか。

過去は戻らない。
なぜそんなにも不確かなものに突き進んでいくのか、だんだん、明らかになっていく。
自暴自棄じゃない、全部捨てようとしてるわけじゃない。
もう二度と、取り返せないものが、ある。
取り返せないのに、そこにある。
取り返せないという事実がそこにある。
全部いらないんじゃなく、それを拾い上げるために、進むことを選ぶ。
止まったら、引き返したら、そこで終わりだ。前にしか、前かどうかもわからないけどとにかく、進む。

一体正気なのかなんなのかわからないタン編集長は最後のスピーチで、ずっと、はっきり意志を持って、少なくともその一点では、しっかり正気だったんだと気付かされる。
詠みあげられない詩。
でも、旅を共にして、その詩は、映画の全部から、聞こえてきたような気がした。