ぶみ

セールス・ガールの考現学/セールス・ガールのぶみのレビュー・感想・評価

3.5
人生なんか、怖くない。

センゲドルジ・ジャンチブドルジ監督、脚本、バヤルツェツェグ・バヤルジャルガル主演によるモンゴル製作のドラマ。
ひょんなことから、アダルトグッズショップでアルバイトをすることとなった大学生が、ショップの店長や、来店する人々と交流することにより、変わっていく姿を描く。
モンゴルの首都ウランバートルで家族と暮らしながら、大学で原子力工学を学ぶ主人公サロールをバヤルジャルガル、アダルトショップの女性オーナー・カティアをエンフトール・オィドブジャムツが演じているが、私の記憶が正しければ、モンゴル映画を観るのは初めて。
物語は、大学で本意ではない部門を専攻しているサロールが、様々な人と出会い、自分の行くべき道を探し求めていくという、ある意味、王道を行く展開を見せるのだが、何より秀逸なのは、その核となるのが、アダルトショップであるということ。
アダルトショップの店員でありながら、化粧っ気もなく、地味な服装であり、グッズのグの字も知らないようなサロールのアンバランスさが、何とも滑稽。
また、店に訪れる客も、人目を忍んで来たり、堂々と品物を吟味したり、はたまた場合によっては、自宅まで商品をデリバリーしたりと、様々な顔があり、これまた人間の裏の顔を見ているかのよう。
そこに、謎多き店長カティアが絡んでくるため、面白くならないわけがない。
アダルトショップを舞台にしているせいか、要所要所で下ネタがぶち込まれるのだが、これがまたあっけらかんとしているため、淫靡な雰囲気は皆無で、軽く笑い飛ばせるものばかり。
また、少し調べたところ、モンゴルのクルマは大半が日本からの中古車のようで、確かに、街並みに映るクルマは、2代目プリウスが断然多く、その他にも、一昔前のハリアーやプロボックス等、日本車が多かったのには、何だか嬉しくなった次第。
加えて、全編を通じて、地元の人気シンガーソングライターMagnolian(マグノリアン)のヒット曲が流れており、時折、MVかのように、本人が歌うシーンが挿入されるのも面白いところ。
流石に、終盤にある天井のエピソードは、振り切れた感があり、もう笑うしかないのだが、オープニングと終盤では、まるで別人かのようなサロールの変化を楽しめるとともに、英題に考現学を加えた邦題のセンスも粋だと思う一作。

幸せは、それだけでは存在しない。
ぶみ

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