幽斎

オールド・ナイブスの幽斎のレビュー・感想・評価

オールド・ナイブス(2022年製作の映画)
4.0
傑作「マンチェスター・バイ・ザ・シー」Big Indie Pictures製作。社名通りインディーズを手掛けるが、最近はアマゾンからの発注が多く、アカデミー3部門ノミネートされたレビュー済「愛すべき夫妻の秘密」も、その1つ。AmazonPrimeVideoで0円鑑賞。

中身に入る前に「どうしても」言いたい事が有る。Amazon日本支社、お前だよ!。何だこの邦題、日本人が英語を知らないとかナメてんのかよ。原作のタイトル「All the Old Knives」。確認したけどアメリカのアマゾンのタイトル「All the Old Knives」。つまり原作と同じ。しかし、日本は「オールド・ナイフ ~127便の真実~」Filmarksは「オールド・ナイブス」。全部バラバラ、センスの無い邦題、以前の問題。

冠詞「the」を省く事は見逃せる、それは日本語に無い文法だから。最近はTwitterで邦題にクレームされる事も多いらしいので、長くてもそのままカタカナ表記にするタイトルも増えた。私の様に007程度なら字幕要らない派も居るので、それは「あり」なのだが、「a」とか「an」も同じ意味で発音のアクセントも諄いので、無くすのは「あり」。

しかし「All the」を省けば意味は全く異なるし「オール・ジ・オールド・ナイブス」何ら問題ない。私はレビューを書く前にアメリカの公式サイトを確認するのが日課ですが、検索すると間違いなく、刃のカスタムナイフに辿り着く(笑)。実は原因を知ってるから怒ってる訳で、アマゾンの中の人で翻訳を担当するのは社外の下請け会社、サイトの管理もアマゾンの外注が運営。データ管理が共有出来無い事が原因だが、外資系で働く皆さん、お疲れ様です(笑)。

Olen Steinhauer原作「裏切りの晩餐」岩波書店。数年前に読了済ですが、随分渋い作品を選んだモノだ。版権が安かったのかな?(笑)。Steinhauerはアメリカのハードボイルド推理作家。CIA諜報員ミロ・ウィーバー「ツーリスト」シリーズが有名だが、デビュー作「嘆きの橋」文春文庫は警察ミステリーで、日本では某国民警シリーズとして2作品が翻訳済。作品のテイストは、ミステリーとしては脇が甘いが、海外の描写には定評が有る。本として薦めるなら「ツーリスト 沈みゆく帝国のスパイ」。

原作は会話劇が基本で、エンタメ要素は申し訳程度。当初はKate WinsletとIdris Elbaがキャスティングされたので、ポリコレを意識した配役だなと思ったら、Winsletが「アバター」の続編「The Way of Water」へ行っちゃったので、Michelle Williamsを招集したが「お話が地味ね」と降板。最終的に選ばれたのが、レビュー済「レミニセンス」Thandiwe Newton。彼女を一躍有名にした「ミッション:インポッシブル2」以来のスパイ役。

男優側もチェンジするが選考が難航、結局Chris Pineが選ばれた。代表作が有る様な無い様なまま来ちゃった感も有るが、彼も「エージェント ライアン」一流のスパイ小説の主役を務めたが「華がない」と興行成績は散々でKenneth Branaghに恥を搔かせた苦い思い出が有る。決して演技が下手では無いが、本作を観ても年相応な渋さも無く、アマゾンが時間切れで名前で選んだのかもしれない。

北米もAmazonPrime独占配信だが、アメリカではチョッとした論争が巻き起こった。ヒントはChris Pineが41歳。Thandiwe Newtonが49歳。何か感じませんか?。貴方が此れまで見た映画を思い出して下さい。主演俳優に対して本作は主演女優が8歳「も」年上。日本人の感覚だと意味が分らないと思う。大サービスでヒントを出すと、アメリカには熟女AVは有りません。答えは女性が年上のシニアパートナーはハリウッドでは「極めて」稀なのです。本作は2022年リリースの中でも目玉商品ですが、Chris Pineでは不安だったのかLaurence FishburneとJonathan Pryceも呼ばれて本家「007」と遜色ない。多分だけど、大赤字ですね。

ミステリーのフロントは4通り有る。1つは、読者が犯人を知ってるパターン。倒叙モノとも言います。2つ目は読者にミスディレクションを誘発させるモノ。3つ目は登場人物は犯人を知ってるが読者は知らないパターン。4つ目が皆さん良くご存じの犯人だけが真実を知るオールド・クラッシック。本作は3つ目に該当します。サプライズは脚本は原作者Steinhauerが務めてる。テニス映画の監督では不安が募ったのかもしれないが、原作を読んでる身からすると作品のコンバージョンは意外と悪くない、つまり地味って事です。プロットは「誰が内通者か?」。

ルーティーンを辿れば誰でも犯人は瞬時に看破出来る、スリラーが苦手でも原作を読んで無くても全く問題有りません。但し原作は世界的なベストセラーなので、犯人が解けてからが本番、ソレは見てのお楽しみ。与えられる情報の大半が台詞の中に有るので、退屈な点は痛し痒し。ネタバレでも無いがロマンス要素が結構太目なので、ジャンル分けも戸惑うが「初めからソウ言っといてよ」と言う方、言いましたからね(笑)。スリラー要素は薄いので、ネタバレ考察は遠慮しますが、伏線の鍵は「青い天井」。

怒った割には「All the Old Knives」の意味がサッパリ解らない(笑)。私はイギリス英語とアメリカ英語なら日常使いに困らない程度に分る自信が有るが、ソレでも駄目。ロスに住む同業者(彼は中京区出身)に聞いても分らない。バーミンガムの友人(右京区出身)も分らない。うーん、分る方はコメント下さい、京都で牛すき焼きでも奢ります(笑)。

英文法で無いとすれば、後は古代史の引用しかない。京都の大学でラテン文学を専攻する友人が答えを教えてくれた。これはネタバレに為るので詳しく書けないが「イソップ風寓話集 叢書アレクサンドリア図書館」に記されてた。中身にチョッとだけ触れると古代1世紀の復讐劇、意味が分ると原作の「裏切りの晩餐」的を得てる、とだけ追記したい。

女性と2人で「赤ワイン」を飲みながら観たい。フォロワーの方で誰か立候補は?(笑)。
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