ねむろう

猫たちのアパートメントのねむろうのレビュー・感想・評価

猫たちのアパートメント(2022年製作の映画)
3.0
2023新作_013


猫と私たちの
「これまで」と「これから」



【簡単なあらすじ】
韓国・ソウル市内の江東区にある、かつてアジア最大と呼ばれたマンモス団地。ここは、老朽化のため再開発が決まり、少しずつ住民の引越しや取り壊し工事が進んでいる。この団地には住民に見守られて250匹の猫たちも暮らしていた。猫たちのこれからはどうなるのか?猫と住民によるお引越し大作戦が始まる。



【ここがいいね!】
「動物もの」の中でも、特にネコを題材にしたものは、特に「猫たちのゆるい日常」を描くことが多いように思います。それは、イヌと比べてネコは、「気ままであること」そして「感情(のようなもの)の表出が少ない(ように見える)こと」に理由があると思っています。そのため、ネコをメインキャストに置いたとしても、浮き彫りにされるのは、「その周辺」なのです。それは「人間」であり「自然」であり……。
それを下敷きにすると、この作品も「人の世の移ろい易さ」を描いているのかなと思います。戦後の動乱の中、分断された朝鮮半島。そして、その中でも韓国は、長い間、軍事政権から民主化へと歩を進めていきました。そんな中の1980年代に建設された団地。2000年代に再開発計画が持ち上がり、2021年に退去が完了するわけですが、この40年の中で、様々な人が暮らし、世代を繋いでいった人もいるでしょう。それは、猫たちも同じなのです。もちろん子どもが増えないように、行政側がサポートしている部分もあるかもしれませんが、暮らしの拠点であったことは確かです。そんな「ネコとともに生きること」を描いた作品なのかなとも思います。



【ここがう~ん……(私の勉強不足)】
作品を通して、猫たちがこの団地から別の地へ「緩やかに」引っ越していく様が記録されていきます。それを見ると、やはり猫たちの「その後」が気になってしまいます。「ネコは生活の場所が変わるととてもストレスを感じる」という話はよく聞きますが、それは野良猫(保護猫)も同様なのでしょうか。もちろん、映画として世に出す時間の関係上、そこまで記録することはできないので仕方が無いことではあります。これより先は、自分で調べる必要がありそうです。



【ざっくり感想】
映画を多く観るようになって、『ストレイ』や『世界ネコ歩き』などの「動物もの」も観るようになっていきました。その中で考えることは「ダイバーシティ」ということです。「多様な個性を包括的に受け入れる社会」という意味だと思いますが、それはあくまで「人間」同士の話です。しかし、この作品を観るともっと視野を広く持ち、「多様な『生物』とともに生きること」について考えさせられる作品だったと思います。
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