人生ベスト。圧倒的大傑作。三年ぶりにオールタイムベストTOP10が入れ替わった(後述)。ブルガリアの至宝ビンカ・ジェリャズコヴァによるキャリア後期の代表作で、続く二本『The Great Night Swim』(1980)、『On the Roofs at Night』(1988)と緩く三部作を構成している。監督ビンカ・ジェリャズコヴァとその夫で製作上のパートナーだったフリスト・ガネフは、共に共産主義政権樹立に際して積極的に参加したものの、理想主義者だった二人は、すぐに政権の欺瞞に気付き、深い幻滅を味わうことになる。この緩く形成された三部作では、これまでのストレートな作風から離れ、20歳前後の女性を主人公として、次世代に継承されてしまった嘘まみれの疲弊し停滞した同時代の社会の欺瞞を主体的に明らかにしていっている。