コレも変すぎてついていけない。チェリーシェイク一杯で終日カフェのテーブルを書斎代わりにするジャンピエールカッセルの一大計画。カッセルの描いた絵図という名の宿題を素直に実行するのは冴えない銀行マンのトランティニャン。ハッタリと下半身を武器に、政治やマスコミ界にまで闖入、バカバカしいくらいにあっさり人が死んでいく。辞職の理由を聞かれて「いろんな女をモノにしてお金持ちになりたい」って笑顔のトランティニャン。公園でナンパしたギャルファッションのバーキンさんをホテルでぶん殴って意気投合。サファリパークみたいなところでライオン目の前に静かな涙を流すロミーシュナイダー裸にトレンチ姿も拝める。祝杯をあげた後はじめて起立したカッセルの足元は怪人マブセ…。デタラメで破壊的でますます気になるミシェルドヴィル。しかしロミーの存在感は後を引く。

先々週に引き続き、フランス地上波で推しのミシェル・ドヴィル監督の映画です。テレビも8月の閑散期はこういうマイナーな名作で穴埋めしてるんでしょうか？さてこちら実に半世紀前の映画。監督を始め登場する役者さんたちも最近バタバタと亡くなったのは感慨無量です。ところでトランティニャン、バーキン、ロミーとスター揃いなのに日本で封切りされてないもようです。なのでこれまたレビューの数が少ない！(皆さんどこでどうやって観たのかしら？)ミシェル・ドヴィルの作品は、能を観てるのと同じ感覚を呼び起こしてくれる。ちみもうりょうの虚ろい。解ろうとしなくても途中で寝ていても良いのです。一年で一番パリが閑散となる本日、外は雷の鳴る夜に家に居ながらこんな体験をさせてくれてありがとうございました。

フーターズみたいなジェーン・バーキンに存在しない誰かを待ってるのって地味な銀行員にしちゃ洒落てるじゃんトランティニャン。スタイル良すぎてもはや人形なバーキン、喋り方も服も下品なの。教育されたのか三度目に会うときの花柄ワンピかわいい。そしておもちゃみたいなリングもゴールドへ。バーキンの友だちにはマックィーンそっくりと言われるトランティニャンはもーモテモテ。神より年上のばあさんの姪にはポール・ニューマン。情事はすべて小説家ジャン・ピエール・カッセルに報告、カフェでの二人の会話も撮り方遊びまくってて楽しい、そしてチェリーシェイク飲みたい！コーラとミルクにケチャップ（の代わりにマスタードで代用）のカクテルはノーサンキュー。金持ちになってたくさんの女と寝たいんです、という理由で仕事を辞めたいと申し出るトランティニャン、ハンディキャップないなら席を譲れとじいさんに声をかけて隣のばあさんに目が見えないと言いながらヌード雑誌読み出すトランティニャン、そんなにハンサムじゃないしべつにインテリでもないし魅力もない、だが！いい車がある！ってロミー・シュナイダーに叫んで車に乗せるとこさいっこー、遠くへ連れてって返事も。そしてサファリへ、ライオンに囲まれて泣くロミー。今まで観たなかでこのロミー・シュナイダーがいちばん素敵かもしれない。ジャン・ピエール・カッセル最後に立ち上がったときにハッとさせられる。