少年期の極貧生活を原体験にしている盲目の按摩師(勝新太郎)が、独自の処世術を駆使しながら、檢校の地位に上り詰めていく。座頭市の前夜祭的な位置付けにある、時代劇サスペンス。「檢校(けんぎょう)」とは、寺社を管理する最高職のこと。
生まれながらの不幸により、善悪が混交した倫理観をもつようになった盲人が、ひたすら欲望を貪っていく。「膨らみ切った自我の暴走状態」と「障害者にもロクでもないヤツはいる」を地で行く内容になっている。
狡猾なテクニックで金と女を奪い取ろうとする、前半部のドラマ展開があまりにも面白い。とりわけ、不義を働いている若妻(中村玉緒)を恐喝するシークエンスが絶品であり、全身をバタつかせながらワタワタと走っていく所作に大笑いすることができる。
勝新のめくらキャラは、1962年度から開始する「座頭市」へとシフトチェンジしていくのだが、個人的には本作の座頭がベスト。頭がイッちゃってる人間の生態を見て、ショックを受けたい人にうってつけの逸品。