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鶏の墳丘のCHEBUNBUNのレビュー・感想・評価

鶏の墳丘(2021年製作の映画)
3.7
【カニロボVSハードエッジロボット】
動画版▼
https://www.youtube.com/watch?v=w7LO9IxFzqs&t=194s

先日、シアター・イメージフォーラムでユニークな中国アニメーションを観てきた。ここ最近、中国アニメーションの勢いが凄い。『雄獅少年/ライオン少年』は獅子舞の細かい動きを精密に3DCGで再現している。『深海レストラン』では、ジブリ映画的要素をディズニー/ピクサー映画のタッチで描いたものだが、水の滑らかな質感、複雑なモンスター造形が特徴的であった。『アートカレッジ1994』のリウ・ジエン監督は、一見するとアニメにする必要のないような動きのない画を通じて新しい表現を模索している。このように、様々なアプローチから日本やハリウッドの要素を継承しつつ新しい表現の提示が行われている。今回観た『鶏の墳丘』はシー・チェン監督がほとんど一人で3年近くの制作期間を経て完成させた作品である。実際に観ると脳天を殴られたような衝撃を受けたのであった。

自分を人間だと思い込んでいるカニロボたち。それを巨大な人間型のロボット、ハードエッジロボットがいびっている。やがてカニロボとハードエッジロボットとの間で仁義なき戦いが勃発していく。アナログ的動きとデジタル的動きをアンバランスに配置し、目まぐるしく変化する局面、つんざくような音が画を支配する。戦争の凄惨さを聴覚と視覚でもって観客に突きつけていく。戦争が行われる中で個のベクトルを一定方向に統一するためにプロパガンダ動画が作られる。そして市民の安全を確保するために拡張世界を使ったミラータウンが作られ、ユートピアとなる。戦争は終結したのか?カニロボとハードエッジロボットは距離を取り和解したのだろうか?映画は「否」と答える。結局のところ、ミラータウンを作ったところで『マトリックス』のように物語による攻撃を受けて破壊は繰り返されてしまうのである。シー・チェン監督は、バグのような映像の洪水を通じて戦争論を語る。そのアプローチのユニークさに惹き込まれたのであった。
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