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実録平成暴走烈士のTSのレビュー・感想・評価

実録平成暴走烈士(2014年製作の映画)
3.4
【どの時代にもいる反撃の狼煙】74点
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監督:吉野量哉
製作国:日本
ジャンル:ドキュメンタリー
収録時間:54分
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 滅茶苦茶興味深かったです。自分の住む世界とは180度違う世界を観れた気がして地味に満足度は高かったです。暴走族=反社会分子と思われがちですが、暴走族の中にも鉄の掟があり、なによりも仲間を大事にして行動する風潮がある。いつの時代どこにでもこういうコミュニティは存在すると思います。群れをなして自己を肯定するために動くという団体は必ず存在します。ただ、かなしくもそれらの行動が明るみに出てきた時、暴走族は排除されるべきものとして認識されてしまうのです。本ドキュメンタリーは、元暴走族だったライターが、昭和から平成にまたがる暴走族の歴史をインタビューしていくというもの。映画としての評価はこれくらいでしょうが、あまりにも知らない世界を知れたという満足感はあるので見て良かったかなと思いました。

 ナレーターが丁寧に暴走族の歴史をまとめてくれています。若者達はこぞって特攻服を着てバイクを改造して、夜中の道路を駆け巡っていきます。一見、何のルールもなくただただ暴れているだけの集団かと思いきや、族の中でもルールはあり、守られないと厳しいヤキを入れられる模様。完全なる縦社会であり、挨拶の声が小さければ即ヤキを入れられます。これって教育的にどうなの?という大きな問題がありますが、正直に申し上げるとこういう教育も一定の効果はあるでしょう。いわゆる「恐怖による教育」です。現在の教育現場では体罰にも繋がりますし全否定されるものではありますが、歴史的に見てもこのやり方にも一定の効果はあるのです。話はそれますが、こういう教育がタブーとされていく昨今、心身ともに弱すぎる人が増えたのではないかと思えてしまいます。何かあればすぐ⚪︎⚪︎ハラと認定され、また匿名性の高いSNSで言葉の暴力をふるい、住みづらい世の中になってきています。今現在の教育に関してはまた数十年後に評価がされると思いますが、それでも暴力は完全に悪ですからこれらの恐怖による教育を支持するわけにはいきませんね。

 と、脱線しましたが、このあたりについても考えさせられました。今作を見てドン引きしたり、嫌気がさす人もいるでしょう。しかし、僕はこういうコミュニティがあるとわかり、そこで真剣に生きる人達の生き様を見れましたのでむしろ清々しかったです。彼らから見たら、まともにエリート職について偉そうにしている人が馬鹿馬鹿しいかもしれませんし、一方でその人から見たら暴走族なんてただの荒くれ者に見えるかもしれません。そう、住む世界が違いすぎてお互い対話をしようとすらしないのです。しかし、世論的には暴走族の方がどうしても反社会分子になってしまうため撲滅されていくのです。

 自分たちのナワバリをつくり、他の暴走族と対立していく様なんてのは、良く言えば日本の戦国時代の様子とあまり変わりない。人は争うのを好む性を持っています。その欲望をむき出しにしつつも、仲間を大切にしてルールを守る。こういう生き方もあって良いのではないかなと個人的に思えましたね。ただ最後に語弊のないようにいうと、暴力はいかなる場合においても犯罪であり、道徳的にいけないものです。
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