けいすぃー

背 吉増剛造×空間現代のけいすぃーのレビュー・感想・評価

背 吉増剛造×空間現代(2021年製作の映画)
4.2
詩人のモノローグが印象的だった。「窓は向こう側が見えるから良い」「ガラスは安いから作品を消さずに取っといてくれと言われたけど、窓から見える景色は変えられない」「窓に書いた絵を消すとき、世界の背を見るような気分になる」

アート作品としてまず物凄く興味深かった。ガラスという素材の透明性で表裏一体のカンヴァスに絵を描く。即興的で偶発的なパフォーマンスでありながら、そこにカセットテープの音声、詩の語りや叫び声が合わさる。金づちでガラスを小突いたり、手のひらで叩いたり、引っ掻いたり、素材としての脆弱性が、作品の偶然の美を高めていた。ライブミュージックも見事だった。全体がひとつの曲として愉しめる映画はなかなかないのではないだろうか。

そして撮影だ。ガラスの正面と背面を寄りで写し、長回しをする。一見単純だが、アートパフォーマンスの特性を最大限に活かし、感触を味わわせてくれた。この一発限りのパフォーマンスにどのような準備をして挑んだのか興味深い。
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