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線は、僕を描くのutataneのレビュー・感想・評価

線は、僕を描く(2022年製作の映画)
4.0
紙の白に墨の黒。
なぜだかとてもカラフル。

紙という二次元の平面に描き出されるのは、遠近感や構図だけでないその向こうの全ての命の息吹き。
紙という二次元の奥の、もうひとつその先には、自らの気持ちやきらめく様な世界が広がっていて、「命を懸けて」力の限り描かないと伝わらないのかな。
私達観る側の目にも作品に触れて、心が震える情熱を確かに感じました。

大切な人を失って止まってしまった時間が動き出す瞬間の躍動感、スピード感に圧倒され、先に歩み始める時、新たな世界に進む時は逆光で表現されていて、明るい未来が待ち受けているかの様。

それにしても流星君のナチュラルで真摯に線を引く姿、果耶さんの実力のその向こう側に苦悩する表現が見事でした。
湖山先生のたった一言が、百を語るよりも説得力に満ちていて、カッコよくて将来そんなオトナになりたいなぁと本気で思いました。

「ちはやふる」の製作陣と聞いて、ならば絶対劇場に行って観ようと決めていた作品。

大正解でした。

水墨画を直接観たことがないのだけれど、
なんともあったかくて心地よい余韻が長く続いています。

できることなら一度、展覧会に足を運んでみよう。
命懸けでぶつかってくる作品に、本気で向き合えるだろうか、自分は負けてしまわないだろうかとそんなふうに思わせる作品。
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