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仕掛人・藤枝梅安2のsayayumeのレビュー・感想・評価

仕掛人・藤枝梅安2(2023年製作の映画)
4.2
時代劇映画の深みと靭さを満喫した。
2月公開の前篇に比べ、仕掛人の因果の影はさらに濃い。男女の闇を経て、今作は世にあぶれた男達の闇だ。それぞれが纏う過去。絶え間ない不穏とひとときの平安。
舞台を江戸から京都に移したことで、余所者仕掛人の梅安と彦次郎が如何に綻びのないバディであるか、迫る因縁の無情を受けて立つアウトローの矜持のあり方が際立った。

梅安と彦次郎は陰と陽を代わる代わる見せながら過去と対峙していく。前篇にはない逡巡や感情に走りそうになる人間味。危機には片方が必ず片方をフォローする。この二人のエピソードをさらに観たい。
悪事の限りに破滅へ突き進む者、自責を他責にすり替える虚無を抱え刀を振るう者。佐藤浩市の醸しだす悲哀は映画に複雑な色彩を与える。
仕掛けはさらにタイトに、殺陣は容赦ない。彼らには逃げる場所、辞める選択肢はないのだ。

だからこそ、師匠津山悦堂との出会いが、おもんのゆるぎない愛情が、おせきのにぎやかな慈愛が光のように感じられる。
二人を守ってきたものがあるとすればそうした身近な者たちの思いなのかもしれない。
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