これは凄い...地上のスリラーと上空のパニックの塩梅も良く、恐ろしいながらもワクワクする。不条理劇ながら第三者的に観れない現実味がある。ふとした箇所に日本では作れない凄みを感じる。上映時間に身構えず、劇場という逃れられない空間の中で手に汗握るフライトを体感して欲しい！
江戸木氏の解説の通り、韓国映画は世界に乗り上げようとしている。今作のクオリティがそれを更に明確化させるように見えた。スロー・無音の多用といった技術的な恐怖から極地まで忍び寄る脅威という心理的な恐怖まで使い方が上手い。特にオートバイを追随する車視点の長回しが好きだなぁ。
企画自体が生まれたのが約十年前というのもあり、まだまだウイルスに旧態依然とした体制である世界ながらも、巻き起こるパンデミックはコロナ禍そのもの。
一つの事件を背景に、企業の隠蔽、世論の動き、デマに踊らされる人々の末路...がリアルタイムかつノンストップに描かれる。まるで無知を追い求めて怯えた現実の縮図のように。
キャッチコピーの通り、一人一人の選択がしっかり価値を持った"個人"の話でもあった。同じ機体の中にいながらも、着陸を強行する操縦士、自主的に断念する乗客、とそれぞれが選択をし、それが一つの機体の運命を何度も動かしていく。
弱い立場にいる乗客に心を痛めるが、我々だって匿名で彼らを劣勢に至らしめる要因の一人だ。韓国産のパニックものには大抵、観客の倫理観すら試され、戒められ、改められる要素がある。
