柿トマト

非常宣言の柿トマトのレビュー・感想・評価

非常宣言(2020年製作の映画)
3.0
韓国からハワイに向かう旅客機で、謎の男がウイルスを持ち込んだバイオテロが発生。乗客・事件を追う刑事・韓国の政府などを巻き込んだフライトパニック作品。

事前に知識を仕入れずに鑑賞したので、もっと「テロリスト側の心情」や「主人公と犯人の手に汗握る直接対決!」みたいなのを想像したが、全然そんなことはなかった。そういう問題は意外とあっさりで、本作では「ウイルスに侵された旅客機が無事に生きて帰れるか?」ということに焦点が置かれていた。

というのも、犯人が振りまいたウイルスは、犯人自身が作成した未知のもの。それに致死性も高く伝染力も強力。ちなみに本作で最初に感染した乗客なんかは血反吐を吐いて死んで、(エンタメ作品の割に)なかなか悲惨な死に方をしてくれる。

そんなウイルスが充満したであろう旅客機を着陸させる訳にもいかず、到着予定のアメリカや、航路上1番近い空港の日本は着陸を拒否。パイロットも伝染し、誰が操縦するのか?韓国に引き返すにも果たして燃料が持つのか?など浮上するさまざまな問題を主要人物たちが解決に向かう物語となっている。

韓国の映画ということもあって、エンタメでもきちんとハラハラさせられる展開を、こちらに伝わるように演出してくれているのは大いに満足。特にパイロットが感染し、旅客機が上下逆さまになったりしながら墜落しかけるシーンは本当に怖いし、劇場で観てよかったと思える箇所。急降下しながら乗客の髪の毛が床から天井に逆だったり、人が天井に打ち付けられたり、本当に地獄絵図だった。こういうシーンで本気を出して怖がらせてくるあたりが、韓国映画の素晴らしさだと思う。

ただそういう姿勢に問題がないわけではない。一番引っかかったのは観客を本気で怖がらせる演出だとはいえ、「日本の自衛隊」が旅客機をあの角度で、あの方向で「威嚇」射撃をするのか?ということは甚だ疑問だ。いくらエンターテイメントを追求したからといっても、あれは無いのでは?
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